20 買い物
合同合宿に参加してから最初の同郷者の集いの日、リアン達は何時ものように広場で待ち合わせ、買い出しに訪れたシズ婆と一緒に露店を覗きながら昼食の材料を揃えていく。そうして何軒かの店で買い物をした後、何とはなしにリアンが一軒の小間物屋の前で立ち止まって商品に見入った。
「どうしたのリアン? 何か気になる物でも見つけた?」
友人の一人ベティが声を掛ける。
「僕、この前また男の子に間違われちゃったみたいなんだ。だから髪を纏めるのにリボンでも結んでみようかなって思って」
「まあ、リアンがリボンを? それは素敵な事ね。女の子だって知った時は驚いたけれど 今では女性として魅力的な雰囲気を持っているのが解るわ。ライラックの瞳は大きくて綺麗、お肌だって唇だってずっと化粧してないから荒れてないし キメも整っていて艶があるし羨ましいわ」
二人で立ち止まって会話していると他の女子も寄って来て会話に加わる。
「うんうん、中等学校に入学する頃のリアンは ”これから凛々しい青年に成長する前の少年” ていう感じで憧れていた女子は多かったよね」
「今でも身長は男子に引けを取らないし、その辺の男子よりカッコいいわ。初対面の人が誤解するのも分からなくも無いわね」
「でも騎士学校の生徒は皆リアンが女の子だって知ってるんでしょ? なんと言っても あの何をやっても目立っているエイドリアン様が溺愛している妹なんですもの」
「いくら何でも『溺愛』ってのは言い過ぎだよ。そういえば間違えられてるのは皆と同じ貴族学園の生徒だった……
知ってるかなぁ 騎士科の ”シリル・リンゼイ” 様 」
「まあ、シリル様とお知り合いになったの?」
「えー、どこで?」
「いつの事ですの?」
リアンの発言にその場に居る貴族学園に通っている女子の圧が高くなった。
「えっと、知り合ったというか、声を掛けたのはこの前皆と別れたすぐ後。先にジェド達が声を掛けててちょっと会話してからすぐに寮に帰ったんだけど その後の合同合宿で再会した時に ”リアン君” て呼ばれたんだ」
「そうなんですの?」
「彼…… シリル様は学園ではとても人気がおありですのよ。あの見目麗しいお姿と文武に長けていらして……」
「それなのにご令嬢方にはあまり関心をお持ちでない所がまたクールで素敵……」
「おまけに伯爵家のご子息ではあってもご次男でいらっしゃるから少し身分が不釣り合いな者でも ”チャンスが有るかも” とか……」
「まあ、私達にしてみれば高嶺の花には変わりありませんけど、手が届きそうで届かない所がまた良いのよね」
「でも今まで男子に間違えられてもそんなに気にした事なかったんじゃない?」
「んー、何でだろ ーーー なんとなく?」
「そうなの? リアンも華やかな王都に出て来て日々成長してるのね。せっかく都会に出て来たんだから剣術だけじゃなくてお洒落とか恋とか色々楽しまないとね」
「暫くはお洒落も恋も縁が無さそうかな」
「そうね。あのエイドリアン様を傍で見ていたら理想が高すぎて恋は難しいかもしれないけど お洒落の事なら協力は惜しまなくてよ」
「そうそう。先ずはリボン選びね」
「ココアブラウンかダークブラウンだと髪には合うけれど地味よね」
「オレンジの花模様は?」
「レモンイエローなら目立っていいんじゃない?」・・・
「「「俺ら先にシズ婆ちゃん所に行くからごゆっくり」」」
女子がお洒落小物を物色し始めると毎回、重い荷物を持ったままかなりの時間待たされる事が分かっている男子たちは一声かけて 先に食堂に向かう事にした。




