表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/32

17 街の見回り


王立騎士学校の生徒が毎月手当てを受けられるのはその手当てに見合った仕事を熟していると見做されているからである。その仕事とは郊外の魔物討伐への参加の他に王都の街の警備巡回も含まれる。いずれも授業の実習という形で参加するのであるが、”報酬が貰える” という事で仕事としての遣り甲斐や意欲を掻き立てるという効果が望める。


王都の街の巡回実習は週に一度、休みの日に当番制で行われる。

一日の巡回は各学年、各クラスから四人ずつの計48人が東西南北それぞれの地区を担当する四つのチームに分かれて行われる。一つのチームに各学年から四人ずつ参加する事になる。

当番は二か月に一度回って来るのだが都合の悪い者は他の者との交代が許されている。


合宿が行われた次の休みの日、リアンは巡回当番となっており王都の街の見回りに当たった。入学してから三回目の当番、前回・前々回は南の地区、今回は東の地区である。

巡回実習は王都警備騎士団に入団してすぐに街に出ても問題ないように街の地理を覚える事も目的の一つとなっている。二回の巡回では完全に把握する事は出来ないが地区の大体の様子や特色を憶える事が出来れば良しとされている。


街のほぼ中心にある王城を取り囲むように貴族の邸宅やタウンハウスが位置しており外円に離れていく程身分の低い者の住居スペースとなっていく。

騎士学校は守りの要の一つとして存在しており王城の北の地区に位置している。


貴族の住居地区と一般市民の住宅街の間に商店街や公園の多くが設けられているのだが言わずもがな貴族御用達の老舗と平民の利用する店は区分けされている。

西の地区から東の地区へと近付く程、貴族にしても一般市民にしても比較的裕福な家柄の者が多いと言って良い。


巡回実習のベテランとも言える二、三年が主導しながらリアン達一年生にとっては初めてとなる東の地区を見て回る。

暫く何事もなく巡回し貴族街の商店が立ち並ぶ通りに入った時、一軒の店の前に数人の人だかりが出来ているのが一行の目に留まった。何事かと三年が先頭に立って近づいて行くと店の前にいた人々が騎士見習いの為に道を空けてくれた。

三年生が中に入っていったのを後輩達が出入口付近で見守る。大勢で押しかけては店の者にも客たちにも迷惑にしかならない。騒ぎの原因は会計カウンターの前にいる令嬢二人に有るようだ。


「これは私が前もって予約しておりました品物です。前回品切れとなっておりましたものを取り寄せて頂いたのです」

「私も前から欲しいと思っていたのよ。今日ここに置いてあったのを見つけたの。私が先に手に取ったのだから私に権利が有るわ」


「すみませんがこれはお売りする為に置いたのではありません・・・」

困惑顔の店員が答える。


「じゃあ何でこんな所に置いたのよ。 どう見ても売り物じゃない」


「先ほど取引先の業者が持って来たばかりで仕舞忘れただけでございます」

「棚に置いてあったのは事実でしょ。私が先に見つけたのよ。それにあなた確か中等部でしょ。年下なのに生意気よ」

「私が年下という事はこの問題とは関係ないと思います」


暫く遠目に成り行きを見守り事の次第を大方把握した今回のチーム長を務めているメイさんが声を掛ける。


「失礼いたします。王立騎士学校の巡回の者ですが何かお困りのようですが如何されましたか」

「私、貴族学園中等部に在籍していますアイリーンと申します。先ほどからこちらのジョゼフィーヌ様が私の注文していた品物を先に手にしたのは自分だから譲りなさいと仰って引いて下さらないのです」


店の中を覗き込むように事の成り行きを見守っていたリアンは ”貴族学園” という言葉と ”ジョゼフィーヌ” という名前に困惑した。あれは高等部に通っている姉に間違いない。上都して間もない頃、エド兄に「タウンハウスに顔を出す必要はない」と言われ理由を聞けば「ジョゼフィーヌの性格は俺にもリアンにも合いそうに無いから関わらない方がいい」と言われた。

それ故姉とは三年以上、いや交流パティー以外でまともに顔を合わせた事が無い。姉は今の僕を見ても妹だとは気付かないだろう。


尚も見守っているとメイさんが提案した。

「それはこちらのお嬢様に権利がありますね。このお品は断念されて改めてお取り寄せをお願いされたら如何ですか?」


そこで店員が口を挟む。

「それがこのお品物は限定販売となっておりましてこちらの一点で受付終了となりました」

「それでは諦めて頂く他ありませんね」

「だからこれを譲ってって言ってるのよ」

「そうは聞こえませんでしたが?」


「貴方、たかが騎士学校生徒のくせに生意気よ。上司は誰なの⁉ 」


「・・・」


見かねたリアンが黙り込んでしまったメイに近づきそっと耳打ちする。後ろに下がったメイに代わりにリアンが進み出て答える。


「今の王立騎士学校の生徒の代表はエイドリアン・リトレーです。今日の出来事は全てエイドリアン先輩に報告する事となっております」

「エイドリアン・リトレー!  お兄様に・・・」


「お兄様?ですか。そういえば貴族学園に可愛い妹様がいらっしゃるといつも自慢話を聞かされております。貴方様が先輩の自慢の妹様でしたか」


「そう…いつも可愛いと自慢を・・・分りましたわ。お兄様の顔を立てて今日のところは私が引かさせて頂きますわ」

そう言うとさっさと店から出て馬車に乗り込み去っていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ