16 合宿翌日の話題
当日討伐した魔物をいきなり解体作業から、というのは色々な問題があるので
合同合宿の魔物討伐実習の夜の食事はギルドによって解体された物を材料にして
その他に支給された固形スープの素や乾燥野菜・根菜などの野戦食糧を各グループごとに工夫して使いバーベキューやシチューなどの料理を作る。将来、遠征した時などに現地調達した食材を使った野戦料理を作る為の訓練である。
北の森で合宿を行っている一班の夕餉は工夫された肉料理の数々が並んだ。
学校での訓練と違い実際の魔物と対峙するという厳しい現実を目の当たりにした者の中にはパンとスープさえも喉を通らないという者も何人かはいたが・・・
二泊三日の合宿を終え疲労困憊した者も含め全員が学校に帰還した
次の日の朝の食堂。
何時もの様にリアンとその仲間が食堂の一角に集まって朝食を摂っていた。
「北の森って深いだけあって魔物の数は多そうだったな」
「うん。今回一班が倒した魔物の数って合宿史上最高数って言ってたよね」
「やっぱり今の三年は特別強いのか、強運なのかどっちかだな」
「両方だろ」
「だけど普通は魔物に遭遇する確率が高いのは強運とは言わないんじゃない?」
「そっかぁ? 俺は運が良い奴だと思うけどな」
食堂のあちこちで話題になっているのはやはりそれぞれの班の合同合宿の情報交換だ。隣に陣取っているグループの会話が聞こえてくる。
「三班てさぁ 魔物に全然遭遇しなかったって言ってたぜ」
「 全然? 」
「ああ。全く。魔物どころか小動物や鳥もいなかったってさ。不気味だよな」
「天変地異の前触れか何かじゃないだろうな?」
「どうだろ……とにかく訓練らしい訓練が出来なかったんだと。
そんなんだったから昨日の晩飯は ”例年になく貧相だった” って三年生がぼやいてたらしい」
聞くとは無しに聞こえて来た会話にボブが話題を変える。
「そうそう。同室のやつが言ってた。 ”魔物討伐は初めての体験だからワクワクしてたのに全然魔物がいなくて残念だった” って」
「ボブと同室の奴っていつも剣術の授業の時に相手の振り上げた剣にビクビクしてて ”こいつ魔物を相手にして本当に大丈夫なのか” って噂されてた奴だよな」
「そうそう。魔物と遭遇しなかった事が幸運だったと言える奴」
「でも何で東の森だけ魔物がいなかったんだろうな」
「ああそうだよな。俺達が行った時にはすぐにファングボアを狩れたのにな」
「本当に天変地異の前触れだったりして」
「まあその時は成るようにしか成らないって諦めるしかないんじゃない?」
「リアンはある意味、俺達より肝が据わってるよな」
「俺はまだまだやりたい事が一杯あるからな。簡単には諦めたくないぜ」
「それは僕も一緒だけどリックは例えばどんな事が心残り?」
「ん~ 自分で稼いだ金で腹いっぱい食べるとか?」
「ベタな答えだな」
「じゃあニースはどんな事したいんだ?」
「俺は可愛い子と付き合ってからじゃないと諦めきれない」
「それもベタな答えだろ」
食事を終えて教室へと向かいながら先ほどまでの危機感はどこかに追いやって
呑気に会話する。
天変地異を疑わせるような東の森の奇怪事象の原因が
自分たちが合宿前に行ったバーベキュー前の爆竹もどきの爆音にあるとは
微塵も気付いていない人騒がせな面々であった。




