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12 合同合宿 其二


北の詰め所まではリアン達の早歩きでも三時間。合宿自体は団体行動となっているが、学校を出発してから目的地の騎士団詰め所までは生徒各々が自分のペースで歩いて行く。自分のペースと言ってもあまりに他の者から遅れてしまっては ”騎士団入隊の資格なし” と早い段階に見限られてしまうので体力に自信の無い者は遅れない様必死になってついて行かなければならない。


リアン達は勿論先頭集団に混ざり相変わらず雑談をしながら歩みを進める。

目の前には最近忙しそうにしていてプライベートでは顔を会す事のなかったエド兄が歩いている。後輩であるリアン達は食堂で小耳に挟んでから気になっている事について聞いてみる事にした。


「リーダーが一年の時の合宿に貴族学園の一年生が特別参加していたって聞いたんすけど どんな生徒でした?」

一番興味を持っていたボブが先ず口火を切った。

前を向いたままエイドリアンが答える。


「ああ、俺らと一緒にキラーウルフを討伐した奴だな。名前はシリル・リンゼイだったかな。冒険者登録もしてて ”魔物討伐は初めてではない” って言ってたな」


「一年生でリーダーやサブリーダーと張り合えて貴族学園に在籍なんて王城騎士団でも十分入団できるんじゃないですか?」

今度はリアンが聞いてみる。


「どうかなあ。本人はその気が無い様だったぞ」

「魔物討伐に執着してるとか、ちょっと危なそうな奴とかっていう感じは無かったすか?」

ボブが思っている事をそのまま口にした。


「いや、至って普通の礼儀正しい伯爵令息だったぞ」


「ボブ、先入観でそっち方面に思い込むのは失礼だって」

「一年生で既に冒険者登録してるって言うんだから俺らと同じでやっぱ強くなりたいんだろうな」

「前に言ってたみたいに ”名誉より市民の為” って言う奇特な人なんだよ」


気になっていた事が一応一つの答えに達し、そろそろ目的地という事で一行の歩みが早まった。


学校を出発した時は纏まって歩いていた生徒たちも先頭が目的地に到着する頃にはばらばらと散らばって最後尾の生徒は道程の三分の二程度までしか到達していなかった。


北の森の詰め所は王都防衛の要でもあるが故に砦仕様となっている。森の奥の谷合から流れ出る川が眼下に見える高台に建てられていて森に沿って石造りの高さ数メートルの防護壁が聳えている。


砦に到着した生徒は午後に集合が掛かるまで自由行動をとる事が出来る。その間に学食で用意され各々がリュックに入れてきた昼食を摂り、敷地内にある騎士団詰め所や冒険者ギルドの見学等が許されている。


リアン達は三年のエイドリアン率いるグループの次に砦の門を潜った。仲間たちと初めて目にする王都のギルド本部に目を輝かせる。


「ちゃちゃっと昼飯食って冒険者ギルドの見学に行こうぜ」

「そんなに慌てなくても集合迄はまだ二時間ちょっと有るんじゃない?」

「時間余ったら騎士団詰め所も見に行こうぜ」

「それって順番違くない?」


一方、エイドリアンはリアン達に問われた事で二年前の出来事を思い浮かべていた。

突然の魔物の襲来によりその場が混乱状態となった為、討伐実習が一時中断されて長い休憩に入った。


まさか特別参加とはいえ貴族学園の一年生が躊躇う事無くキラーウルフを一撃で倒すとは思ってもいなかった。その横顔に見入っているとどこかで会った事がある様な気がする。声を掛けて先に名乗ると相手も思い当たった様で

「春の休み中に文具店で声を掛けさせて頂いた方ですね」と言われた。


そう言われてみれば王都に出て来てすぐ、それまで付き合いの殆んど無かったジョゼフィーヌにせがまれて文具店に渋々同行したが、馴れ馴れしく纏わりつく態度に嫌気がさしていたところに声を掛けてきた少年だ。


半年前の事だが妹が煩わしくてイライラしていた事もあり話の内容は覚えていないがジョゼフィーヌに何か尋ねていた。別れた後、礼儀正しかった彼に対してジョゼフィーヌが失礼な物言いをした事に呆れた事は覚えている。


社交辞令で「ジョゼフィーヌ様はお元気ですか」と聞かれたが「あの後妹は貴族学園の中等部二年に進級したはずだが、あの時以来会ってはいないよ」と答えただけだった。

彼もそれ以上の事は聞いてこなかったので以前ジョゼフィーヌに聞いていた事は些細な事であったのだろう。


昼休憩と自由時間が終わりほとんどの者が揃ったところで集合が掛かり広場に急ぐ。

学年ごとに整列し詰め所指揮官等の挨拶を聞く。最後に貴族学園からの参加者が前に出て紹介される。

最前列に並んだ班長のリアンはその中に見知った人物を見つけた。

彼もこちらに気付いたようで一瞬目を見開いて他の人が気付かない程僅かに会釈した。リアンもにっこりと微笑んで軽く頭を下げた。



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