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村人の日々  作者: 昼の月
418/426

手が止まらないとき

「……早いな」


ノルがぽつりと漏らした。


ユルンの手が止まらない。


中央から取り、

端へ置き、

また別のものを取る。


流れるように続いている。


*****


「いいことじゃないか」

ユルンが言う。


*****


オルナが少しだけ首を傾ける。


「……考えてるか」


*****


ユルンの手が一瞬止まる。


「考えてる」


だが、すぐにまた動く。


*****


グラドが言う。


「水も、流れすぎると

 形が分からなくなる」


*****


イセラが布を持ちながら言う。


「手が先に動いている」


*****


子どもが作業台の前で見ている。


「速い」


*****


イルロはその動きをしばらく見てから、

一つ道具を持ち上げる。


そして――


中央ではなく、

少し離れた場所に置く。


*****


ユルンの手が止まる。


「……どこだ」


*****


少し探す。


中央を見る。

端を見る。


そして、見つける。


*****


「そこか」


*****


オルナが言う。


「止まったな」


*****


グラドが頷く。


「見た」


*****


ユルンは道具を手に取り、

少しだけ考えてから使う。


*****


「……確かに」


*****


イセラが言う。


「一度止まると、見える」


*****


子どもが真似をする。


わざと少し遠くに置く。


そして探す。


*****


「見つけた」


*****


ノルが言う。


「速いだけじゃ足りないか」


*****


オルナが答える。


「見る時間もいる」


*****


グラドが言う。


「流れの中に、

 一度の溜まり」


*****


ユルンが笑う。


「わざと迷うか」


*****


イルロは静かに言う。


「……少しだけ外すと、

 手ではなく目で動きますね」


*****


作業台の上は整っている。


だが、

少しだけ乱れがある。


*****


その乱れが、

手を止める。


*****


そして、

また動き出す。


*****


速さと、

間。


*****


その両方が、

自然に混ざり始めていた。

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