行き来する手
「……遠いな」
ユルンが作業台の前で呟いた。
細かい道具を取り、
次に大きい道具を取ろうとして、
手が少し止まる。
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場所は二つに分かれている。
取りやすい。
だが――
少し離れている。
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ノルが様子を見る。
「どうした」
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「行ったり来たりだ」
ユルンが答える。
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オルナが頷く。
「畑でも同じだ。
離れすぎると往復が増える」
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グラドが言う。
「水も回り道は重い」
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イセラが布を持ちながら言う。
「近いほうがいい」
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子どもが二つの場所を見比べている。
「……真ん中?」
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全員がその言葉を見る。
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イルロはゆっくりと頷く。
「中間を作りますか」
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「三つ目か」
ノルが言う。
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「ええ。
よく使うものだけ」
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ユルンが笑う。
「いいな、それ」
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オルナが言う。
「全部は置かない」
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グラドが頷く。
「流れを軽くする」
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イセラが静かに言う。
「通る場所」
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作業台の中央に、
小さな場所ができる。
ほんの数点だけ。
よく使うもの。
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ユルンが試す。
細かいものを取り、
中央の道具を使い、
大きいものへ。
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「……いい」
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オルナも動く。
「止まらない」
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グラドが言う。
「流れたな」
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イセラが道具を置く。
迷わず、中央へ。
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子どもが小さく笑う。
「真ん中」
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ノルが頷く。
「繋がったな」
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イルロはその動きを見ながら言う。
「……分けたあとに、
繋ぐ場所があると整いますね」
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二つだった場所に、
一つが加わる。
だが、
増えた感じはしない。
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行き来は減り、
流れは滑らかになる。
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動きは止まらない。
ただ、
少しだけ楽になる。
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工房の中に、
新しい動き方が静かに残った。




