表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村人の日々  作者: 昼の月
414/416

探す時間

「……ないな」


ユルンが工房の中で立ち止まった。


手には何も持っていない。

棚を見て、作業台を見て、

もう一度棚を見る。


*****


「どうした」

ノルが聞く。


*****


「小さい刃だ」

ユルンが答える。

「さっき使ったやつ」


*****


オルナが棚を指す。


「そこじゃないか」


*****


「ない」

ユルンは首を振る。


*****


グラドが作業台を覗く。


「こっちもないな」


*****


イセラが布を持ったまま言う。


「昨日、動かした」


*****


少しの沈黙。


*****


「……増えたな」

ノルが言う。


*****


棚。

作業台。

手元。


置く場所が増えた分、

探す場所も増えている。


*****


子どもが近づいてくる。


「それなら、ここ」


作業台の奥を指す。


*****


ユルンが覗く。


「あった」


*****


「なんでそこに」

オルナが聞く。


*****


子どもが答える。


「使ったあと、そのまま」


*****


ユルンが少し笑う。


「悪くないが、

 探したな」


*****


グラドが言う。


「流れすぎた」


*****


イセラが静かに言う。


「戻らないと見えない」


*****


イルロは作業台に手を置きながら言う。


「……一度だけ戻す場所を決めましょう」


*****


「一度だけ?」

ノルが聞く。


*****


「はい。

 使ったあと、最初に置く場所です」


*****


オルナが頷く。


「起点だな」


*****


グラドが言う。


「そこから動く」


*****


ユルンが笑う。


「戻り先じゃなくて、

 出発点か」


*****


イセラが言う。


「それなら迷わない」


*****


子どもが小さく頷く。


*****


一つ、小さな場所が決まる。


棚でもない。

作業台の端。


*****


「ここに一度置く」

ノルが言う。


*****


午後、

道具はそこに集まる。


そこから、

また動く。


*****


ユルンが言う。


「探さなくていいな」


*****


オルナが頷く。


「見れば分かる」


*****


グラドが言う。


「流れが戻った」


*****


イセラが布を畳む。


「動いても、見える」


*****


イルロはその場所を見ながら呟く。


「……増やすだけではなく、

 一つ決めると整いますね」


*****


場所は増えた。


だが、

起点ができたことで、

迷いは減る。


動きながら、戻る。


その繰り返しが、

工房の中に自然に残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ