表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村人の日々  作者: 昼の月
411/416

残さない基準

朝、工房の前に新しい籠が置かれていた。


昨日とは違う実。


少し色が濃く、

指で押すとわずかに柔らかい。


イルロはそれを見て言う。


「……進みましたね」


*****


オルナが頷く。


「昨日より後だ」


*****


グラドが一つ持ち上げる。


「水分もある」


*****


ユルンが袋を置く。


「そのままでもいけるな」


*****


イセラが布を持って言う。


「色も安定している」


*****


少しの間、

皆がその実を見る。


*****


「混ぜるか?」

ノルが聞く。


*****


ユルンが首を振る。


「そのままでいい」


*****


オルナが言う。


「もう足りている」


*****


グラドも頷く。


「強くない」


*****


午前中、

新しい実はそのまま使われる。


*****


ユルンが一口食べる。


「甘い」


*****


オルナが頷く。


「ちょうどいい」


*****


グラドが言う。


「水に入れなくてもいい」


*****


イセラが布を染める。


「重ねなくてもいい」


*****


だが――


*****


イルロは少しだけ考える。


そして言う。


「……混ぜる必要がないときは、

 混ぜないほうがいいですね」


*****


ノルが笑う。


「やりすぎるところだったな」


*****


昼前、

工房の前に人が集まる。


*****


ユルンが言う。


「昨日は混ぜた」


*****


オルナが続ける。


「今日はそのまま」


*****


グラドが言う。


「使い分けだ」


*****


イセラが頷く。


「状態で変える」


*****


午後、

新しい実はそのまま使い切られる。


混ぜない。

足さない。

削らない。


*****


夕方、橋の上。


ユルンが言う。


「そのままでいいときもある」


*****


オルナが頷く。


「手を入れないのも一つだ」


*****


グラドが川を見ながら言う。


「流れに任せる」


*****


イセラが布を畳む。


「触りすぎない」


*****


イルロは空の籠を見ながら呟く。


「……加えるだけでなく、

 引くことも基準になりますね」


*****


セレン村の初夏は、

混ぜることだけでなく、

そのまま使うことも

自然に選び始めていた。


足りないときは混ぜる。

足りているときは触らない。


その違いが、

暮らしを整える。


明日もまた、

違う状態のものが来るだろう。


そのたびに、

少し考える。


それで十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ