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村人の日々  作者: 昼の月
410/416

合わないと思ったもの

朝、工房の前の籠はほとんど空になっていた。


青い実は数えるほどしか残っていない。


イルロはそれを見て言う。


「……減りましたね」


*****


オルナが頷く。


「混ぜた」


*****


グラドが続ける。


「いろいろ試した」


*****


ユルンが袋を置く。


「だが、合わないものもあった」


*****


イセラが布を持って言う。


「色は濁ることもある」


*****


少しだけ、静かな間ができる。


*****


「合わないなら、やめるか?」

ノルが聞く。


*****


ユルンが首を振る。


「まだ試す」


*****


午前中、

それぞれが少し変えたやり方を試す。


*****


ユルンは焼いたものに少しだけ混ぜる。


「量を減らす」


*****


グラドは水に薄く入れる。


「濃くしない」


*****


オルナは細かく刻む。


「形を変える」


*****


イセラは別の色と重ねる。


「一度ではなく、重ねる」


*****


昼前、

再び集まる。


*****


ユルンが言う。


「……さっきよりいい」


*****


グラドが頷く。


「薄いほうが合う」


*****


オルナが言う。


「刻むと残る」


*****


イセラが静かに言う。


「重ねると濁らない」


*****


ノルが笑う。


「やめなくてよかったな」


*****


イルロは残った実を見ながら言う。


「……合わないのではなく、

 強すぎただけですね」


*****


午後、

残っていた青い実も使い切られる。


形を変え、

量を変え、

混ぜ方を変えて。


*****


夕方、橋の上。


ユルンが言う。


「そのままだと強い」


*****


オルナが頷く。


「扱い方だな」


*****


グラドが川を見ながら言う。


「水も同じだ」


*****


イセラが布を畳む。


「重ねると残る」


*****


イルロは空になった籠を見て呟く。


「……使えないものは、

 ほとんどないですね」


*****


セレン村の初夏は、

合わないと感じたものさえ、

扱い方を変えることで

暮らしに取り込んでいく。


強すぎるものは、

弱める。


合わないものは、

重ねる。


それだけで、

形は変わる。


明日はもう、

新しい実が出るかもしれない。


それをまた、

少しずつ試す。


それで十分だった。

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