合わないと思ったもの
朝、工房の前の籠はほとんど空になっていた。
青い実は数えるほどしか残っていない。
イルロはそれを見て言う。
「……減りましたね」
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オルナが頷く。
「混ぜた」
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グラドが続ける。
「いろいろ試した」
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ユルンが袋を置く。
「だが、合わないものもあった」
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イセラが布を持って言う。
「色は濁ることもある」
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少しだけ、静かな間ができる。
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「合わないなら、やめるか?」
ノルが聞く。
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ユルンが首を振る。
「まだ試す」
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午前中、
それぞれが少し変えたやり方を試す。
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ユルンは焼いたものに少しだけ混ぜる。
「量を減らす」
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グラドは水に薄く入れる。
「濃くしない」
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オルナは細かく刻む。
「形を変える」
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イセラは別の色と重ねる。
「一度ではなく、重ねる」
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昼前、
再び集まる。
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ユルンが言う。
「……さっきよりいい」
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グラドが頷く。
「薄いほうが合う」
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オルナが言う。
「刻むと残る」
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イセラが静かに言う。
「重ねると濁らない」
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ノルが笑う。
「やめなくてよかったな」
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イルロは残った実を見ながら言う。
「……合わないのではなく、
強すぎただけですね」
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午後、
残っていた青い実も使い切られる。
形を変え、
量を変え、
混ぜ方を変えて。
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夕方、橋の上。
ユルンが言う。
「そのままだと強い」
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オルナが頷く。
「扱い方だな」
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グラドが川を見ながら言う。
「水も同じだ」
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イセラが布を畳む。
「重ねると残る」
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イルロは空になった籠を見て呟く。
「……使えないものは、
ほとんどないですね」
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セレン村の初夏は、
合わないと感じたものさえ、
扱い方を変えることで
暮らしに取り込んでいく。
強すぎるものは、
弱める。
合わないものは、
重ねる。
それだけで、
形は変わる。
明日はもう、
新しい実が出るかもしれない。
それをまた、
少しずつ試す。
それで十分だった。




