開戦Ⅲ
かっこよく書きたいです。
「ギャオオオオオ!」
炎は瞬く間に人を燃やす。
輝く炎は星の光よりも強く、辺りをから漂う人が焼ける匂いはその美しくも強力な光と熱に比例して強く漂った。
「い、言うことを聞いて下さい~!」
イナバの命令を無視した攻撃。
赤竜のブレスはただ主人が攻撃されたから反射的に、適当に、放ったものだった。
故に赤竜が思ったのはたった一つ。
“ああ、人間とはこんなにも弱いものなのか……”
という無常の思いだけであった。
が
「危なかったぜ……」
「これくらい予想できたことだろう?」
竜の股下を潜り抜けるそれは馬に乗る人型の影。
ドラゴンブレスを何とか躱した者たちで、そのフードが炎のダメージを遮断した。
彼らとは勿論、グリンロードとドロノアーズだ。
紅く彩られた平原へ疾走する。
「ってまだ敵が残っていますよ?!」
「グル?」
ゆっくりと面倒くさそうに振り向き追撃しようとしていた赤竜は彼らのことを侮っていた。
それは彼らの半数が成す術もなく炎に焼かれるのを見ていたから。
もう一息で戦意と命が消えるかと――そう予想していた赤竜は腕に鋭い痛みを覚える。
「グオア!」
人に例えるなら爪楊枝が刺さった程度のダメージだ。
だが、自分を傷つけたのは事実でそれは命に届きうる可能性を秘めていた。
「〈空気抵抗無効化〉、それに加えてオリハルコンの矢を使ったものだ。効くだろう?」
フードは完全に燃え尽き、姿を現したのは太い腕を持つ筋肉隆々の男。
黒い長髪と右目の下に傷のあるドロノアーズ。
たった一人、されど不敵に笑うその敵将は赤竜の視線をくぎ付けにする。
笑うその敵将に呼応するように赤竜も吠えた。
「〈森人の火炎〉」
シュタイヤは杖を振り薙ぎ払う様に魔法を唱える。
二、三人の敵兵は成すすべなくその炎に焼かれ、死の舞踊を踊る。
「~~~!」
声にならない悲鳴。
地面を転げまわってもその火を消すことはできない。
魔法による特殊な発火方法とそれを強化する術をハーフエルフが持っているからだ。
「精霊様、ありがとうございます……」
よく見れば炎の中に無数の小さな赤いトカゲが見える。
火の精霊と呼ばれている精霊補助の効果でより強力に尚且つ、消えにくいそれは一般兵の命をたやすく奪い去る。
「このおおおおおお!」
一人の敵兵が仲間の屍を乗り越え、シュタイヤの前に躍り出る。
煤が頬と鎧に付着して彼を汚しているが、闘志が満ちた瞳はギラギラと輝いていた。
彼はただの一兵士で今年、兵役に着いたもの。
屈強な体は村一番の力持ちだと言われその見た目と力によって領主に兵役を命じられたものだ。
鉄製の武具は大剣で隙間なく装着された甲冑は一兵士としては過分であるがそれだけ彼の実力が認められていると言うことの表れだった。
「うおおおおおおおおおお!」
気合の声と共に振り下ろされるその大剣はハーフエルフの細腕とレイピアでは防ぐことはできない。それはエルフ種の定め、弱点となる筋力不足が原因であり彼らが魔法を得意とする種族だから。
だが――。
「遅いですね」
「?!」
彼はただの一兵士で今年から入隊した新参者。
寿命が長く、生きた年数も剣を振った数も桁外れであるシュタイヤには届かなかった。
だからこれは必然。
「がは!」
喉を貫かれ、血の唾を吐く。
急所を一撃で突くシュタイヤは接近戦でも彼らに対して遅れは取らなかった。
「前線は何とか持ち直せましたね。後は――」
キン!
「っと、まだいたのですか?」
「殺せると思ったんだがな」
馬に乗って素早く移動したグリンロードは砦の中に侵入していた。
構えているのはスコットを貫いたクロスボウと短剣。
腕にある骸の王冠の入れ墨が月光に照らされ、青の瞳がシュタイヤを見つめていた。
「ハーフエルフか……」
「スカル・クラウンですか……」
油断なく互いが見つめ合うのは互いの実力を認めているため。
あちらこちらから聞こえる金属の悲鳴、炎の燃える音は彼らには聞こえなかった。
戦場にいるはずなのにそこには二人しかいない。
それほどまでに彼らは集中しており――
「メル様との約束を果たすため……討たせてもらいます」
激闘を演じるのであった。
メルの活躍はこの後です。




