それは戦い
0時に投稿したいのですがズレることがあります。
現在の戦況は五分と言ったところ。
砦の侵入を許した反乱軍と、強引に砦に攻め入った王国軍は互いに少なくない犠牲を払いながら夜の時間は進む。
「敵の手札はすべて切りましたね」
「はい、ここまではメル様の作戦通りです」
メルと後ろにいる女性騎士はある場所へと向かう。
金髪の女性騎士の顔は兜に覆われており見えないが整った顔だろうと予想できるほどその佇まいの動きは清廉されていた。
地下へと続く階段を下りるのはメルと女性騎士。
月の光も風も届かない地下の松明は不気味に暗い通路を照らしていた。
そして、鉄格子がある扉の前にメルたちは立つ。
「……決意は変わらないのですか?」
「はい」
広い部屋とは言えない。
が、それでも他の者たちとは破格の待遇を約束された部屋に閉じ込められている男が一人。
服装もそれなりに許されている彼は鎧を着ている。
「……敵が攻めてきたのですね?」
「そうです。……何者かが情報を漏らした。そう考えるのが妥当な状況であり、そう考える人が多くいても可笑しくない状況です」
「…………」
暗い牢屋から上半身が浮き出るようにフランシスは姿を現す。
幽鬼のようにふらりと力なく立っているフランシス。
その顔は無表情で自分たちの運命に諦めを感じる目であった。それは自分たちの運命を理解したからであり、メルの後ろにいる女騎士の鋭い直剣が見えたから。
「覚悟はできております」
フランシスは静かに目をつぶった。
責任をとるのは彼で、もしかしたら彼が指示を出したのかもしれない。だが、その疑惑は確かな証拠がるわけでなく状況的な判断での有罪。
理不尽なこの世界はそれが当たり前なのだ――。
チャリン。
「?」
フランシスが覚悟を決めたその刹那。
金属の何かが投げ込まれる。
「……最初からそのつもりだったんですか?」
「……」
女性騎士の問いにメルは答えない。
暗くてよく見えないが音からして小さなもの。
それを拾い上げるフランシスは……。
「なぜ……だ?」
「私はフランシスさんたちを殺したくはありません。それに皆さんは捕虜であり劇団員ですから」
「ば、馬鹿な!今は戦争中なのだぞ?!」
その覚悟が無駄になったことで怒るフランシス。
常識的に考えて敵に容赦などしないのが戦場の掟であり常識。
勝利を掴むためなら自分たちを殺すのが当たり前だ。
「こ、この責任は一体だれが取ると言うのですか?!」
「それは勿論、私です」
だが、メルの決意は変わらない。
胸を張り上げ勇ましく宣言するメルは無知な少女に見える。
だからこそ尋ねる。
「……例え、あなたの騎士を殺した者であったとしてもですか?」
静かな声で尋ねる女性騎士はメルの覚悟を見つめていた。
これからもこうした捕虜は多くなることが予想できる話であり、メルの大切なものを奪うものがいるのも当たり前の話である。
だからこそ、メルはこう返すのだ。
「いえ、例え私を殺した者であってもです」
「……」
勇ましい決意をするメルは英雄姫であった。
「……この戦いは私たちがフランシスさんたちを許すための戦いです」
そうメルは宣言した。
「ハハハハハ!」
ドロノアーズは笑いながら馬を疾走させる。
その後ろを巨大な影を持つ竜が追う。
月の光も遮るその巨体は漆黒の恐怖を地上にいる者たちに伝播させ、恐怖を掻き立てる。
「グルルル」
低く飛ぶ赤竜は馬に向かって腕を振り下ろす。
単純な筋力だけの暴力はクレーターを作り、その威力を証明する。
だが。
「何処を狙っている?」
馬を走らせるドロノアーズはその華麗な馬裁きでその一撃をよけるのであった。
「そ、そっちじゃないですよ~!」
ドロノアーズの狙いは明らかに竜を砦から引き離すのが狙いでそれは乗り手であるイナバも理解している。
だが問題は竜がそのことに理解していないことだ。
「オオオオ!」
自棄になり腕を振り回す赤竜に対して冷静に対処するドロノアーズに攻撃が当たらないのは明白。
イライラが募る赤竜は周りが見えていなかった。
「ドロノアーズ様の援護をしろ!」
その言葉と同時に竜の背後から大量の矢が赤竜に降る。
蚊に刺された程度のダメージ。
されど、その数は数百本にのぼればある程度のダメージを受けるのは道理。
「グルル……」
「フハハハハハ!どうだ!」
失速する赤竜に対して後ろにいる騎兵隊は嬉しさのあまり腕を突き上げる。
竜に少なくないダメージを与えたのは誰もが理解していることでその証拠に赤竜の飛行速度は落ちている。
赤竜の下を追い抜くのは騎兵隊。
墜落するように慣性に従って飛んでいるに過ぎない赤竜であるが――。
ギロリ。
「っ!」
竜は見ていた。
口から涎のように炎を垂らしながら。
「ギャアアアアアア!」
雄叫びと共に炎の嵐が吹き荒れる。
圧倒的暴力はその痕跡を残さず、骨まで燃やす。
一緒に戦った戦友も乗っていた愛馬もそのことごとくが炎と一体化した。
「……化け物め」
馬を走らせるドロノアーズは呟く。
鱗の合間に矢が刺さっている赤竜は未だにその力の衰えを感じさせない。
其れこそが正しく絶対者の振る舞いであった。
人の領域は未だに森を加えていない。
それは魔物という剣よりも魔法よりも強力な力が存在するからであり、それは容易く人の命を奪うものだからだ。
「賭けに出るか……」
その言葉と同時に空を覆う竜の腕は振り下ろされるのであった。
次はシュタイヤとグリンロード戦です。




