攻防
康貴の一撃がこの場の緊張の糸を切ったように、止まった時間が動き出した。
「槇! 何やってんだよ! さっきっからぼーっとしてよ!」
「えっ?」
「くるぞ!」
カンナの湾曲する斬撃を受け流すとその背後からかおりが槍を突き出す。
それを軽く避けると魔力を溜め始める。
「ホントにどうしたの? らしくない」
「すまん、なんか夢でも見てたみたいだ」
「やめてよ。集中して」
次の手の妨害に康貴がまた地面を砕く。
「金色の人、あの人がやられちゃったんだから、私たちだけでやらないと」
叱咤したその口でまた詩を歌う。それが槇に力を与える。
「そうだな」
康貴の大きな隙を狙って闇を爆発させる。
防ぐも堪らず飛ばされかおりの横を滑っていった。
「くそぉ、痛てぇ」
「うふふ、あまちゃんたちにかなう相手じゃないわ。次で終わりよ」
「そんなことは!」
『させないんだな』
槇の目が金に光る。
その瞬間、カンナに刃が触れる。
「ウヴォっ!!」
そのまま上空に上げると背中から燃え上がる炎が翼となり、優雅に羽ばたく。
「くらえ!!」
炎の剣を一直線に持ち飛び上がる。
その刃がカンナの体を貫くのはその次だった。
「槇!!」
康貴が直ぐに反応した。
電光石火で近づきカンナに斧を振り落とし地面に叩きつける。
「ばか! お前までっ!!」
「うふふ、遅いわ」
2人はおかしなほど強い重力に吸い込まれ、地面に叩きつけられる。
そのまま地面に囚われているように立ち上がれなかった。
「うそっ!」
「あら、人の心配してる場合?」
「……っ!!」
『そんなことさせないよ』
かおりの瞳が光り輝くと喉に迫っていた剣を波動ではじき飛ばし、そのまま槍で頭を殴りつける。
それと同時に、立ち上がることを許された2人が追い打ちに一斉に刃を振り下ろす。
「調子乗るんじゃねぇぞ!」
漆黒に染まった腕が2人の刃を握り、軽々と2人を投げ飛ばした。
「あの、クソ女め。厄介なことしてくれやがる」
悪魔の顔をしたカンナはギロっとかおりを睨みつける。
「その女か。このオレ様をやれる力を持ってるってやつは!」
漆黒の手を振り上げると、地面がチェーンで繋がれた爆弾の如く順序よくかおりに近づいていく。
かおりは直ぐに地面に結界を描き、魔法を打ち消す。
爆煙が視界を奪う。
「っ!!」
上空から気配を感じ直ぐに突き出す。
しかしそれはかわされ殴り飛ばされる。
それで終わらなかった。
飛んでる最中に並走していた。
再び殴られ向きを変えて勢いを上げる。
その先でもまた並走していた。その手には、湾曲した禍々しい剣が持たれていた。
「チェックメイト」
「おんどりゃぁ!!」
その巨大な斧は見事なまでに、その剣を折った。




