四次元トリック
かおりの詩を飲み込もうと左手を伸ばすと、闇が具現化し鋭い獣の爪となったそれを、槇が軽くあしらう。
そのまま懐まで突っ込み、その腕を切り落とそうと剣を振り上げる。
「あはっ! カワイイね、君!」
闇で硬化した腕は、槇の剣を易々と受け止める。
「君さぁ、私の方につかない? そうしたら、この世界の……」
「世界の半分くれるって話しなら、絶対に断らせてもらうよ」
「あら、話がはやくて楽だわぁ。まるで私の言葉を知ってたみたい」
「もはや、ラスボスのお決まりのセリフなんだよ、それ」
「なにそれ」
歪に歪んだ剣を振り下ろす。
避けるために距離をとる槇。
「それに、あんた、なんか信用できない」
「あら、失礼しちゃうわ」
次の瞬間、槇は危険を察知した。
身構えるがそれでも遅いと言わんばかりに槇は吹き飛ばされる。
「私を侮辱する悪い子にはお仕置きだわ」
ニヤリと笑うと恐怖に代弁されるオーラがその場を覆う。
「どっちがいい? 嬲られて死ぬのと、痛みの感覚が無くなって死ぬの。選ばせてあげるよ」
「あほか、死なねぇよ」
「あら、そう」
一瞬なにが起こったのかわからなかった。
気がつけば宙を浮いていて、
お腹に穴が開き、
死が訪れた。
「そんな予知も可愛く思えるだろ?」
金色の光が目の前にいる。
「えっ?」
「なにが起こってるかって? ボクがいない時の時間からボクのいる時の時間に替えただけさ。そう、四次元トリックってやつさ」
槇は理解できず、しかし次の動作はわかった。
「ボクがいる時にはあいつは倒せないけど、ボクがいない時にはあいつは倒せる」
そう言って彼女は消えていった。
混乱しているのは槇だけではない。
ただ、理解した。そういう表情で槇は最悪の男を見る。
その男は苦虫を飲み込んだような顔をしていた。




