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華甲二年の再会  作者: 有嶺 哲史
第一章 春、夏、秋
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第7話 理事長とフリーター女医

 世の中には病院を乗っ取ることを専門にする連中がいる。

ときに投資家やコンサルタントと称し、病院によくある資金繰りの悩みに付け込んで融資をし、そのうち人を送り込んできて理事や理事長に就き、病院資産を喰い散らかすように売り飛ばし消滅させる。

しかしここは公立病院だからそんなことは起こらないと思われていた。

ところが怪しい人々は先に経営母体である自治体に喰い込んでいた。

 彼等は病院乗っ取りの専門ではないが様子はよく知っていた。

公立病院の経営権は創設母体が握っていたり独立性の高い場合病院の理事長が握っていたりするが、もめ事が起ると曖昧になる。

一般に経営権は理事長にある。

病院グループなどでは権力の強さで言えば理事長は社長、院長は支店長以下かもしれない。

しかし実質は大事なことを知らされていないお飾り理事長だったり、院長が兼任していたり、こども理事長なんて者がいたりする。

院長の子息だ。

小学生がやっているわけではない。

こうなると実質最高権力者がすぐには判らない。


 ところがこの時期この病院の理事長は本物の小学生がやっていた。

院内で勢力が対立する中、話し合いで決まった理事長だが一方の勢力は子供だとは知らなかった。

小学生だから医者であるはずもなく例外を認める厳格な審査もなかったらしい。

それでも不思議なことに病院の経営母体である市は認めてしまった。

反対勢力が気づいた時は後の祭りだった。

 その少年は学校からの帰り道に立ち寄り、理事長席にランドセルを放り出し漫画雑誌を読んでいるところに決裁文書がさしだされ、署名・捺印していた。

何でも即座にOKを出すこども理事長は、やがてだまされた勢力も便利さを認め、表に絶対バレてはいけない双方暗黙の合意の極秘事項になった。

ところが本人が学校で極秘事項を言いふらしていた。


「ぼく、リジチョーなんだぜ」


「なんやそれ。番頭はんぐらい偉いんか?」


誰も意味が解らなかった。


 ある幹部の医師が理事長の印をもらおうとやってきた。

こども理事長がいなかった。

そこに立っていた背の高い女医に聞いた。


「理事長はどこにいった?」


医師としてはあでやか過ぎるこのフリーター女医は派閥に属さないので病院内の情報に疎く、それまで理事長がこどもに代わっていたとは知らなかった。


「私も理事長に用事があるのに、それらしい人はいないのよねえ。子どもが理事長の席に座っていたので『おいっ、お前が座るところじゃない! どきやがれ』というと変な顔して見上げるので『クソガキ! とっととけえれ! へをこいて寝ろ』と怒鳴り付けたらべそかいて帰ったわよ」


「バッキャロー!」


「えっ、どうしたの? なんなのよ?」


「その子が理事長だっ!」


眼球が飛び出るほど驚いたフリーター女医はその時からこの病院のおかしな空気に興味を持ち、密かに調べ始めた。

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