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華甲二年の再会  作者: 有嶺 哲史
第二章 秋から冬
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第15話 当日の朝

 深呼吸をした。

十一月のはじめ、よく晴れた朝の冷気に心技体が充実する。

主役でもないのにまるで運命の日のように心がざわざわしている。

おれ(有嶺)は今日何十年ぶりかにかつての絶世の美女弓美子を見る。

老いている自分なのに期待してしまう。

今日、彼女にとって意味の無いおれにまで肛門から大腸奥深く内膜を見られてしまう。

しかしおれにとっては業務だからあらゆる邪心を排して平静であるべきだ。

 早朝病院の検査室の隣室へ行くと、なんと前日テーブルに置いていたはずのスコープが無い。

幸いモニターと録画機などはそのままだったので掃除婦のような事情を知らない者の仕業だろう。

平静さが失われたが何とか状況を理解しようと理性を働かせた。

こういう事態だから仕方がない。

医療用のスコープをかっぱらってきた。

モニターに映像が映ったときはほっとした。

縮んだ命が延びた想いだった。

この小さな異変をおれは軽く考えていた。


 病院を廻っていると美矢子がそっと声を掛けてきた。

来るとは聞いてなかったので驚いた。

またやせた彼女にははっきり愛嬌が復活していた。

しばらく姿を消した美矢子が帰ってきたので一緒に検査室の隣室に潜伏した。


 弓美子の番は午前中最後なので準備が終わると検査室には患者と医師とナース以外だれも居なくなった。

助手を務めるのは昨日おれと出くわした背の高い美人ナースだった。

検査はたった一人の医師がやることもあるが普通は三人でやる。

麻酔も使わず技師も不要だったので今回は二人でやる。

おれは検査中の様子をモニターで見守るため美矢子と並んで隣室のベッドに座った。

これからは見守る以外、特にすることがない。


 弓美子の順番になって準備が整った。

その少し前にナースの入れた飲み物を貰って飲んだころから比良野はふらついたりして見ているおれは様子が変ったと思った。

しかし比良野には自覚がなくて、そのまま弓美子のコロノスコピー(CSまたはCF)は始まってしまった。

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