02.
あの夏の日。水斗と澪が浅瀬で水飛沫を上げて笑い合っていた光景が、今でも目の奥に焼き付いて離れない。目を閉じれば、すぐによみがえってくるほどに、鮮明に残っていた。
水斗は島に残り、誇らしげに親の跡を継ぐ。何の疑問も迷いもないのは、清々しかった。
澪は自分の夢を掴むために一時的に島を出て、いつかは帰ってくるつもりなのだろう。帰ってくる家があるという安心感が透けて見えて、羨ましかった。
二人とも、着々と未来への道を固め始めていて、なんとも眩しかった。僕が抱いている不安や虚しさとは縁遠いことが妬ましくて、悲しかった。
二人は両親ともに島の生まれで、本土に住んだことがない。親戚はいるらしいけど、そこまで近い間柄でもない。考えれば考えるほどに、僕とはいろいろと前提が違うなと乾いた笑いが出る。
今の時代、多様性だのなんだの言われているけれど、選択肢が多いと良いのは大人ばかりだと思う。成人するまで、親の承諾がないと選択を固められない無力な子どもは、振り回されるばかりじゃないか。こんな不自由に生きなければならないのなら、いっそ選ぶ権利すらない方が楽なのだろうか。
子どもの選択を受け入れる強さや寛容さがない親。子どもの成人を待てない親。僕の両親はなんて、器の小さな大人なのだろうかと、理不尽に憤りを感じる。勝手につれてきて、勝手に連れ戻そうとしないでくれと叫びそうになる。
僕の今の居場所は、ここなのに。
まだ、水斗と澪と一緒にいたい。終わりなんてひどい。早すぎる。苦しかった。
防波堤の上から、そのまばゆい光景を見つめることしかできなかった。踏み込んではいけない、踏み込めない壁があるような気がした。
あの日以来、僕たち三人だけの世界には、薄い氷が張ったような、寒々しい空気が漂うようになっていた。




