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二度目の見送りの話

「俺、会いに行くから…」

「うん」

「俺のこと、忘れるなよ」

「忘れないよ…」忘れられないよ、と胸が痛くなった。


 フェリーが動き出す。外には、まだ水斗が立っていた。

 なにかを叫んでいるように、口を動かしていた。窓に隔てられているうえ、フェリーが動く音でかき消されている。

「バ、カだなぁ…」

 聞こえないと分かっているだろうに、水斗は叫ばずにはいられないほど、なにかを伝えたくてたまらなかったのだろう。

 ぼろり、と大粒の涙が溢れてきた。

 島で過ごした日々が、脳裏によみがえってくる。戻らない時間に対する切なさが胸を突き刺す痛みと、どうしようもない愛おしさを生んで、止まらなかった。

 この先の未来、なにがあるか想像もできない。だけど、この光景は決して忘れないと予感する。初めて大きな一歩を踏み出したこの日を、決して忘れないだろう。

 別れを惜しみながら送りにきてくれた、水斗の気持ちが、痛いほどに嬉しかった。

 彼のようにまっすぐ感情を伝えられる素直さが、今、欲しかった。そしたら、きっと、もう少しうまく泣くことが出来たと思う。

 嗚咽のような、息を殺すような泣き方しか知らない自分が、心底イヤになる。

 まだ、未熟で不完全な僕らでも、きっと、確かに。これまでの時間を、愛していた。

 終わりは、悲しくはない。次のスタートを切る、必然だったから。

 ただ、ひどく切なかった。

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