表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/34

きっかけの話

 私がいまの趣味であるお菓子作りを始めたのは、姉の影響だった。

 姉が中学生のころにお菓子作りに目覚め、家には常にお菓子の材料が一通りそろっている環境になっていた。レシピ本も増え、台所には数冊の本のストックが置かれていた。

 まだ小学生だった私は、姉がお菓子を作っている横で、内容が理解できないのでレシピ本を写真集のようにぺらぺら眺めていた。どのページを開いても、おいしそうなお菓子の写真が並んでいたので、ファミレスのメニュー表のような感覚で楽しく眺めていたのだと思う。実際、姉に次はこれ食べたいとおねだりすれば、次の週には作ってくれた。

 そのおかげで、私は小学校高学年のころには、たいていのお菓子の名前とどんなものかという知識が合致していたし、作り方も姉の手順を覚えているような状態だった。

 中学に上がるころ、姉が進学で家を出ていくことになった。お菓子作りに必要な道具は、プロ仕様のものを買いなおすからと不要になったらしく。家に大量に残された道具と材料は、そのまま私に受け継がれた。

 今思うと初期費用ゼロでなんて贅沢な趣味をさせてもらえる環境だったのだろうと、感謝で打ち震える感覚だった。

 ひとりで自由に作れる環境になって、私は本格的に趣味としてのお菓子作りを始めたのだった。


 航と水斗と一緒に遊んでいるうちに、二人の食の好みが極端に違うことに気付いた。

 都会育ちの航は、結構なグルメで食には敏感だった。甘いものは好きなのだが、砂糖で甘くしすぎているものが苦手だった。自然な甘さというか、くどくないものだったら好んで食べているようだった。

 一方、水斗はなんでも食べる子だった。というか、家でとんでもない鮮度の果物が手に入るし、おばあちゃん子だったのもあり、甘いものと言えば和菓子というくらい、そればかり食べていた。むしろ、洋菓子はあんま食べたことなかったのだ。スコーンやらクッキーやら、王道をあげてみたけれど、美味しいけれどなんか口のなかがぱさぱさすると不評だった。ただ単に不慣れなだけかもしれなかったが、こちらからすればカチン案件であった。

 そんな二人になんならおいしく食べてもらえるのかと、考えるようになった。

 前提として、甘くなりすぎず、王道なお菓子。味付けは水斗も食べ慣れたもので仕上げる、となると地元の特産を使うといいのかとだんだん構想が固まっていくのは、実に面白い作業だった。

 届けたい相手がいて、それをターゲットにアイディアを展開していく。その人が喜んでくれるかもしれないと思うと、試行錯誤がとても楽しいものになったのだ。

 そのとき、作ってみたのはオリーブオイルを使用したマドレーヌだった。オリーブの風味がよく効いた、しっとりした触感のマドレーヌに出来て、その完成度に自分自身で驚いたものだった。

 二人に食べてもらうと、とても好評だった。航は本当においしそうに食べてくれるし、水斗からしたらしっとりした触感がカステラに似てると喜んでいた。水斗のなかでカステラは和菓子の分類なのかと、そこには驚いた覚えがある。こうして、私のお菓子を好いてくれるようになった二人に、作ることが趣味へ変化していったのだった。

 そこが原点。みんなが好きになるお菓子を作りたい、の夢になったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ