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さよなら、オリーブビーチ  作者: 花守郁
第四章:旅立ちの汽笛
26/34

11.

卒業式、前日の昼間。

航が航のお母さんと一緒に帰ってくる。俺と澪はその帰りを、西村のバス停の前で、今か今かと待っていた。

 俺たちの手には、合格通知書が握られていた。航に第一声で褒めてもらいたくて、ヒッチハイクの板のようにかざしている。

「あ、バス来た!!」澪が叫ぶ。

 目線の先には、待ち望んでいたバスが走っていた。停留所に近づくにつれ、速度が落ちていく。

「航だ! 航だ!」俺が、元気いっぱいに叫んだ。ガラス越しに、航の姿が見えて大興奮する俺たち。

「航――! 寂しかったー!」

「受かった! 受かったよ!」

「ちょ…、おまえら落ち着け!!」

 料金支払い中に叫んだのが悪かった。開口一番、褒められるではなく、怒られた。


 バス降車後、きゃんきゃん思い思いに話しかけてくる俺たちに怒ってしまった航。お母さんに先に家に行くように伝え、俺たちはオリーブビーチに連行された。

 去っていく航のお母さんは、戸惑いながらも口の端がぴくぴくしていた。そこまで笑わなくてもいいじゃないかとも、あのお母さんもあんなに笑いを押し殺すことがあるんだとも、思った。


「「ごめんなさぁい…」」

 一般常識やマナーについて、徹底して怒られた。だけど、お説教しているうちに、航自身もばかばかしくなってきたのか、途中から半分笑っていた。

「本っ当、公共の場では気を付けなよ。特に澪、これから高松でやっていけなくなるぞ」

「ごめぇん…。航の姿が見えたら、頭のなかで言いたいこといっぱいになっちゃって…」

「ごめんなさい…。受かったの真っ先に褒めてもらいたくて…」

 しゅん、と悪いことをしたわんこのようにしょげる俺たち。久しぶりに航を見て、大興奮してしまったのだから仕方ない。離れた日々が思いをつよくしてしまっていた。

「で、受かったのは二人ともおめでとう」

 さくっと本題に進めてくれる航。久々のテンポのいい会話に、これだーと俺と澪は目を輝かせる。

「ありがとう!」

「俺も! フェリー通学にならなくてよかった~」

「あ、そうか。水斗はその可能性あったのか」

「年間の費用が全然違ってくるのでやめてほしいと親からは言われておりましたので大変安心した次第です」

「それはおめでとう。親御さんも安心しただろうね。よく出来ました」

 めずらしくすらすらと抑揚のない敬語でしゃべる俺に、航は乾いた拍手をくれた。

 そして、感慨深そうに深呼吸して、俺たちを見下ろした。

「これで、それぞれ希望通りの進路に行けるってことだね」

 そうだった。これで、やっと全員が、目標に向かって進めるようになったということだった。

 まずは第一歩。そして、大事な別れの時でもあった。

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