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さよなら、オリーブビーチ  作者: 花守郁
第四章:旅立ちの汽笛
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09.

入試を終えた私たちは、燃え尽きて、ゾンビのようになっていた。

 滑り止めの私立高校も受け終わって、もう残すところ、卒業だけだった。私立の結果はすでに出ていた。私と水斗、二人とも無事合格。

万が一、本命が落ちていても進学先はあるという安心を得られて、より脱力していた。しかし、その私立高校はフェリーで通学しなければならないので是非ともお断りしたいので、もやもやがずっと晴れない状態だった。

なにをしようにもどうにもやる気が出ず、この一年酷使した脳みそを休ませるため、休息期間にでも入ったようだった。

「水斗…」

「なに…」

「私たちって、普段なにしてたっけ…」

「……。分からない」

 水斗の家のリビングで、こたつに入ってだらけていた。冬は番屋もオリーブビーチも寒いので、やたら大きな水斗の家で集まり、のんびりするのが恒例だった。

 こたつの上に置いてあるみかんは食べ放題だし、ほかに行くべきところなんてないだろう。お店で売っているのよりおいしいんだもの、このみかん。

「…航になんか、勉強教えてもらうか…。ニュース見てたりしてなかったっけ」

「ああ…」

 おしゃべりでもゲームでもなく、知的活動に勤しんでいたようだ。もう発信担当がいなくなったから、供給がなくて暇になってしまったのだろう。そういえば宿題をして、余った時間はテレビで流れる時事ニュースを解説してもらい、吉田家の食卓が始まったら解散していた。

「あ~~~航ぅ~~~」先に巣立ってしまった幼なじみが恋しくなって、叫んだ。

「わ~~~航ぅ~~~」水斗は自分の家なので、私より遠慮なく声を張り上げていた。

 ダメ人間になった気分だ。高校進学を控えているんだから、中学の総まとめのような勉強をしておいた方がいいのは分かっている。が、つい最近まで燃えていた目標をすでに終えてしまっているのだ。行動にうつすための燃料が枯渇していた。しばらくやる気は出てこないのではないかという枯れっぷりだった。

「私たちの人間的な営みは航によって支えられていたと分かるね…」

「まったくです…。航は自制心の塊というか、欲望より理性というか…」

「問題、正解したら褒めてくれるし…。分からないこと教えてくれるし…」

「めちゃくちゃやる気出たよな…」

 多分、私たちのママだった。こたつのなかで足をもだもだと動かすと、水斗の足に当たった。邪魔だな、と少し蹴ると、ひどいと言われた。うるさい。

 そういえば、こたつの二面しか使っていないのに、いつも航が座っていたあたりを避けているから狭いのだと気づく。彼の存在が、無意識の習慣にまで及んでいて、切ない気持ちになった。

「水斗、こたつもっと広く使お…」

「……。あ…」

 航の定位置を見つめながらの私の発言で、水斗もなんとなく察したらしい。彼がよく使っていたクッションがそこに置いてあるのを見ると、吉田家にも浸透しているようだった。

「なんか、水斗のこれからを思うと申し訳なくなってきた…」

 航だけでなく、私の痕跡もたくさんある吉田家。農家特有の年季が入った大きなお屋敷は、私たち三人のおばあちゃんちみたいな居場所になっていたのだ。

 このなかで、水斗は一人で過ごすことになる。

「寂しくなったら連絡してね」

「…連絡したら、なお寂しくならない?」

「それはあるかもしれない…」

 本当に、私たちは現代っ子なのだろうか。高校でもこれまで通り、電子機器に触れなさそうだなと思った。

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