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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮


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謎のカード

「ちょっと!シルバー!」


「シルバーってばー!!」


耳元で叫ばれて、紫音ははっと顔を上げる。


目の前には、ログチー。

ぼやけていた意識が、一気に現実へ引き戻された。


「……ん?」


視線を落とす。


白いジャケット。

夜の中で、やけに目立つ。

ふと、背中側で布がわずかに揺れた。


「……マント?」


思わず、眉をしかめる。


「似合うねー!」


ログチーが、けらけらと笑う。


「ちょい盛ってみたー」


「盛るな!」


軽く叩く。


まだ違和感が抜けないまま、視線を下げる。


体を動かすたび、銀のチェーンがかすかに鳴る。


「……もうなんなんだよ、これ」


額に手をやり、やれやれと小さく息を吐く。


(……ま、いっか。誰も見てねぇし)


すぐに思考を切り替える。


「……なぁ」


「ん?」


紫音は、ログチーのほうを向いて呟く。


「……さっきのやつさ、一体どれぐらい戻れるんだ?」


「んー……」


ログチーは、首を傾げながら考える。


「今のシルバーだと——1日から、2日くらいかな」


紫音の指先に、わずかに力が入る。


「……今の俺、って?」


ログチーは、にやっと笑う。


「まだまだってこと。能力が開花すれば、もっと戻れるかもね」


「……っ!」


ログチーの声が、少しだけ落ちる。


「でも……これからどうなるかは……キミの特性次第、なんだよね」


「……なんだそれ」


紫音は、息をひとつ吐く。


「……なぁ」


今度は、目を伏せたまま口を開く。


「……例えば、だけど……3年前とかに、戻ることも……ありえるのか?」


紫音は、手を強く握りしめる。


「ん?」


ログチーが、きょとんとする。


「3年前?」


「……出来るのかっ?」


思わず、ログチーを力強く掴む。


「むぎゅっ」


「ちょっ——!」


「あ、わりぃ」


すぐに手を離す。


ログチーは、一瞬だけ真顔になる。


「……無理だよ。さすがに、そこまでは戻れない」


紫音の視線が、ゆっくりと逸れる。


「……だよな」


小さく、吐き出すように呟く。


「?」


ログチーが首を傾げる。


「3年前に何かあったの?」


紫音は答えない。


ほんのわずか、呼吸が浅くなる。


「別に。ただ……聞いてみただけだ」


「ふーん?」


どこか納得していない声。


紫音が、ログチーの言葉に被せるように呟く。


「……さっきのやつ」


今度は、迷いなく続ける。


「もう一回やってみていいか?」


ログチーが、ぱっと顔を明るくする。


「もちろん!」


紫音は、ゆっくりと目を閉じる。


時間。

ズレ。

あの感覚を、なぞる。


指先に、微かな違和感。


「……っ」


視界が、ぐらりと揺れる。


——次の瞬間。


冷たい空気が、肌を刺す。


薄暗い夜。

見慣れた家の前。


「……ここ……」


スマホの日時表示を見る。


胸の奥が、ざわつく。


——あの日だ。

じいちゃんを縁側に呼びに行った日。


足音を殺し、ゆっくりと歩き出す。


玄関の前で、足が止まる。


中に、自分がいるかもしれない。


呼吸を整える。


ふと、足元に視線が落ちる。


「……ん?」


小さなカード。


拾い上げようと指を伸ばす。


触れた瞬間、それは奇妙な熱を持っていた。


「……熱っ」


黒いカード。縁には、細かな装飾。


裏返す。


右下に、小さく——


「At」


「……なんだ、これ?」


そのとき——


「じいちゃん?」


はっと顔を上げる。


——自分の声。


喉が、わずかに詰まる。


視線を巡らせる。


暗がりの奥。

影が、わずかに揺れた。


「……っ」


反射的に身構える。


ガタン——


どこかで、物音が響く。


その瞬間。


「シルバー!ダメ!」


ログチーの声が、鋭く割り込む。


視界が、歪む。


「……っ!?」


身体が、強引に引き戻される。


——次の瞬間。


自室の天井。


「……はぁ……っ」


荒い呼吸。

胸が上下する。


手の中を見る。


黒いカード。


さっきと同じ。

右下に、小さく「At」。


「……なんだよ、これ」


そのとき。


「……クンクン」


ログチーが、顔を近づける。


「……は?」


「これ」


鼻をひくつかせる。


「キミと、同じ匂いがする」


「俺のじゃないぞ?」


即座に返す。


「お前の鼻、詰まってんじゃねーの?」


「はぁ!?」


ログチーが、頬を膨らませる。


「失礼なこと言うな!」


ログチーは小さな体で紫音を叩く。


紫音はそれを気にすることもなく、ベッドに倒れ込む。


小さく、呟く。


「……Revert」


手の中のカードに、視線を落とす。


「……気味わりぃな」


そのまま、意識が沈んでいく。

眠りに落ちる寸前、手の中の熱が、

まるで心臓の鼓動と重なったような気がした。


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