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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮


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白い影の正体

眠れない。

目を閉じても、落ち着かない。

心臓が、やけにうるさい。

さっきまでの出来事が、頭から離れない。


「……はぁ……」

小さく息を吐く。


天井を見つめたまま、視線だけを動かす。

枕元に置いた腕時計に、目をやる。


「……なんなんだよ」


少し間。


「ご主人、眠れないの?」


「……」


紫音は、そのまま背を向ける。


「ご主人ってばー!」


背を向けたまま、紫音が言う。


「……いい加減、その呼び方やめてくんね?」


少し間。


「んー?」


「……その、ご主人って呼び方」


「なんか、むず痒い」


少し間。


「じゃあ、シルバー?」


「いや、そうじゃなくて……」


「……はぁ……もう、好きに呼べよ」


「わかったよ!シルバー!」


嬉しそうな声が返ってくる。


「……」


天井を見つめたまま、紫音は小さく息を吐く。


「……で?」

紫音が、ぼそっと言う。


「ん?」


「さっきの話」


少し間。


「覚醒って、なんなんだよ」


「気になる?」


「……まあ」


ログチーが、くすっと笑う。

「んー……まだ能力安定してないっぽいし……」

小さく呟く。


「まあ、説明するよりさ」

「体感した方が早いよ」


「試してみる?」


「……は?」


紫音は、眉をひそめる。


「試すって——」


言いかけて、止まる。


「……どうやるんだよ」


「んー」


少し考えるような間。


「念じてみて」


「……は?」


「そのまんま」

軽く言う。


「戻りたい時間とか、イメージしてさ」


「……」

紫音は、目を閉じる。


時間。

ズレ。


頭の奥に、あの違和感がよみがえる。

うまく言葉にはできない。


でも——

あの“ズレた感じ”。

それを、なぞる。


「……こんな感じか?」


その瞬間——

視界が、ぐらりと揺れた。


「……っ!?」


足元が、不安定になる。

身体が、ふわっと浮くような感覚。

一瞬、音が消える。


次の瞬間——


静寂。


「……?」


ゆっくりと、目を開ける。

暗闇。

何も見えない。


「……っ」


ポケットからスマホを取り出す。

画面の光で、周りを照らす。


見覚えのある廊下。

家……?


胸の奥が、ざわつく。

スマホに目を落とす。

時刻は、夜中の3時。


「……」


何だ、家じゃないか——

そう思いかけて、

画面の端に表示された日付が目に入る。


「……は?」


(昨日……!?)


ゆっくりと、顔を上げる。


「……ここ、俺の部屋……だよな」


静まり返った廊下。


あの時——

白い影が、立っていた場所。


「……」


ドアに視線を向ける。

ゆっくりと、手を伸ばす。

ドアノブに触れる。


その瞬間——

視界が、引き戻される。


「……っ!?」


身体が、ぐらりと揺れる。

足元が崩れるような感覚。

一瞬、呼吸が止まる。


次の瞬間——

元の部屋。

元の時間。


「……は?」


息が、うまく吐けない。


「ちょっと、ちょっとちょっと!」


ログチーの声が響く。


「近づきすぎ!」


「……は?」


「過去の自分に干渉したらダメ!」


「……」


言葉が出ない。


頭の中で、繋がる。


あの夜。

あの時間。

あの場所。

白い影。


「あの正体は、俺だったんだな……」


「シルバー、聞いてる?」


ログチーの声が響く。


「……」


紫音は、答えない。


視線は、どこか遠くへ向けられたまま。


わずかに、口角が上がっていた。


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