番外編 ボーイズトーク
「はぁ……」
俺は悩んでいた。
分身のせいで、毎日のようにくる女子からの手紙が倍増した。
は?嬉しくないのか?って?いやいや、そういう問題か?俺にとっては不幸の手紙よりタチが悪い。捨てれねぇし、呪いか、これは。
大きくため息をつきながら、とりあえず手紙に目を通す。手書きで書かれた文字が目に入ってくる。
◻︎◻︎◻︎
『黒川くん、大好きです!』
……俺はアンタのこと知らない。
『黒川くんの食べてる姿が可愛いです』
……いちいち見てくんな。
『黒川くんの横顔が素敵です』
……顔に穴があくから見ないでくれ。
『黒川くんとデートしたいです』
……俺は家で寝ていたいです。
『黒川くんから薔薇の花束が欲しいです』
……金欠の俺からたかるのはやめろ。
『黒川くんの笑顔が可愛いです』
……それ、俺じゃなくね?
『黒川くんのYou Tube見ました。歌うますぎ!』
……俺はYouTubeなんかやってねぇぞ?
まさか、大地の奴か?アンニャロ。
「はぁ……」
どいつもこいつも似たようなことばっかだな……マジで面倒くせぇ。
◻︎◻︎◻︎
放課後。
机の上にはまた数枚の手紙が机の上や中に入っている。一体どこから湧くのか……
若干苛つきながら追加された手紙をカバンに入れていると、大地達が声をかけてくる。
「すげえ量のラブレターだな」
ノブがからかう。
「お前それどうすんの?」
大地が言う。
「どうもしねぇ」
ナオが尋ねる。
「それ、全部読むのか?」
「まあ一応」
ノブが聞いてくる。
「呼び出されたら行くのか?」
「まあ一応」
ナオが続けて尋ねる。
「わざわざ断りにか?」
「それ以外何があんだよ?」
三人が一斉に「真面目か!」と笑い出した。
「うるせぇ!」
「じゃあ聞くけど、お前らだったらどうするんだよ?」
三人は顔を見合わせながら答える。
「俺はもらったことねぇし、わからん!」
ノブが堂々と言う。
「俺は読まずにつっ返す!」
ナオが言う。
「それは鬼すぎんだろ……」
「大地は?」
「俺か?まあ読むけど、行かねぇな」
「なんか……流されそうだし?」
「意思弱ぇ〜」
ノブが爆笑する。
「でも……本命だったら速攻で行くけどな?」
照れ臭そうに大地は答える。
「てか、紫音は本命いないのかよ?」
「は?……別に俺は」
「紫音、お前モテるのにもったいねぇ」
ノブが笑いながら言い、さらに尋ねてくる。
「お前らさー、一番怖い女子って誰?」
「桐生先生」
全員が同時に言う。
沈黙。
「満場一致かよ」
ノブが笑う。
「てか、女子に分類されるのか?」
ナオが言う。
「お前ひどい事言うよな」
大地が返す。
「だって怖ぇだろ!まず見た目」
ナオがげんなりとした様子で言う。
「教育指導三時間とか俺まだトラウマだわ」
俺は机に突っ伏しながら答えた。
「紫音なんか一番怒られてるもんな」
大地が憐れむように俺を見る。
「……思い出させんな」
思わず遠い目をする。
三人が一斉に爆笑した。
「お前ら!笑うな!腹立つ!」
拳を軽く握りしめながら大地達を睨んだ。
「まあまあまあまあ」
ナオが仲介するように俺を宥めてくる。
ノブが笑いながら、机をバンバン叩いている。
大地は大地で少し照れくさそうに話を続ける。
「なあ?可愛いって言われるのと、かっこいいって言われるのお前らどっちがいい?」
「かっこいいだろ!」
ノブ。
「かっこいいだな」
ナオ。
「やっぱりかっこいいだよな?」
大地。
「で、紫音は?」
「そんなもんどうでもいい」
冷たく返す。
「何だよ、そのイケメンの余裕かよ?」
ノブがからかう。
「そんなんじゃねぇし」
ナオが言う。
「てか、お前らさ、誰かと付き合ったことある?俺はあるぞ?」
「おおっ!てかナオもイケメンだしな。生徒会だし、モテるよな」
大地が賞賛する。
「まあな」
ナオが自慢げに呟く。
「……ナオ、3日で振られたじゃんよ?」
ノブが突っ込む。
「言うな!ノブ」
再度爆笑が起きる。
「紫音は?お前モテるし、経験者だろ?」
「は?何の経験だよ」
「いや、キスとか、それ以上とか?」
「……は??……そんなもん言うはずないだろ!」
「紫音、耳まで真っ赤だぞ?」
大地が笑う。
「てか、大地お前部活行けよ」
「あっ!やべー」
「じゃあ解散ってことで」
ノブが言った。
◻︎◻︎◻︎
下駄箱を開けると、雪崩のように降ってくるラブレター。眉間に皺を寄せ少しイラつきながら手紙を拾い、カバンに無造作に突っ込む。
「はぁ……」
ため息をつきながら靴を履く。
後ろから明るい声で名前を呼ばれる。
「紫音くーん!」
「げっ……」
距離感バグりの女、蒼乃空。
「紫音くん、一緒に帰ろ?」
「勝手に帰ればいいだろ?」
冷たく返す。
「うん!勝手にするー」
満面の笑顔で言ってくる。
「……は?」
なんなんだよ、ほんとコイツ……。でも、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
「面倒くせぇ奴……」
「今、可愛いって褒めた?」
「言ってねぇし!」
「えー?ほんとに?」
「今すぐ耳鼻科に行ってこい!」
そう言いながら、俺は少しだけ笑った。




