選んだ選択
中に入っていたのは、一枚の写真。
「……ただの写真?」
写っているのは、二人の人物。
坂中と、少し年上の男が右に映っている。
何か見たことがあるような?ないような……
「……!?」
人物の後ろに見覚えのあるバイク。
「これ……」
このバイク……
事故の時にあったバイクだ。
でも、あの現場にバイク運転手はいなかった。
この男に何か関係があるのか?
「……意味わかんねぇ」
クロノスがただの写真なんか渡すはずがない。
ったく!説明しろっての。
「クソッ!」
頭をガシガシと掻く。
とりあえず今の現状を確認しないと……
さて、どうするか?
「なあ、ログチー」
ログチーは半分眠そうにしている。
ほんとコイツは空気を読まない。
軽くデコピンをする。
「いたいっ!何するのさー!」
「この状況で寝るな!」
文句をブツブツ言いながら、俺の首元でモゾモゾ動いている。
「あのさ……」
俺はログチーに耳打ちした。
坂中宅――
警官が白石と大地と話している。
俺は何げないふりをしながら後ろから近づいた。
話している警官が俺に気づく。
「……お前、誰だ?」
「……」
(落ち着け、俺)
帽子を目深く被り、俺は今警官と同じ服装をしている。
「本部から派遣されました!し、白山です!
お手伝いにきました!」
警官らしく、とりあえず敬礼してみた。
「……」
「そうか」
(……通った、のか?)
「じ、自分も話を聞きたいであります!」
警官が俺の顔を見る。
「……お前、」
(ギクッ…)
思わず視線を逸らす。
警官がため息をつきながら
「お前!ピアス禁止だぞ?後でちゃんと外せよ?」
「は?」
「ん?」
「あ、いや、はい……」
(そこかよ!)
警官を少し警戒しつつ、大地と白石を横目で見る。
相変わらず白石の顔色が悪く、大地も不安そうな顔をしている。
結局あのまま、白石についててやったんだな。大地。こんな時なのに、親友の頑張りに思わず顔が緩む。
ん……?てか、大地の奴、
また部活サボったんだな、キャプテンのくせに。
少し呆れてジト目で見てしまう。
「おまわりさん、俺の顔に何か?」
大地が尋ねてくる。
「い、いや、別に」
「……あれ?おまわりさん、どっかで会ったことある?」
(ギクッ……)
帽子で目元を隠しながら返す。
「き、気のせいじゃないかな、はは」
(シルバーで学校で会ったこと忘れてた)
とりあえず話を纏めると
坂中は昨日の夜から帰ってきていない。
あと坂中の家族についての確認があったらしい。
小さく呟く。
「……やっぱり昨日の夜か」
その場を離れようと後ろを向く。
「オイ!白山!」
「どこに行く?」
(やべ……)
「いや…ちょっと腹痛くて……」
「……」
警官がため息をつく。
「早く行ってこい!」
足早にその場を離れ、人のいない公園へ向かった。
「revert」
一旦戻って、頭の整理をすることにした。
最初は『連鎖の始まり』
次は『坂中の名前、48時間、忘却』
そして『選択肢を誤るな』
既に坂中は今自宅にいない。
何かが確実に起きている。
カードの残り時間は42時間02分――
タイマーは刻々と時間を減らしている。
『選択肢を誤るな』
無意識にカードを握りしめる。
でもタイマーは止まらない。
まるで俺を急かすかのように。
嫌な汗が頬を伝う。
カードを見ると新たに文字が浮かんでくる。」
「……っ!」
「……なんだよ、これ」
2人目――
長瀬大地
なんで、大地の名前が……?
もし――
この順番に書かれた人物が消えていくのだとしたら……?
そんなこと、考えたくもねぇ。
『選択肢を間違えるな』
選べっていうのか?俺に……
坂中を助けるか、それとも大地を助けるか
そんなの――
「選べるわけねぇだろ」
ログチーが俺を見上げる。
「シルバー……」
「どうするの……?」
拳を握りしめる。
「そんなの……」
ログチーが心配そうに俺を見る。
「誰か一人だけ助けて終わりとか」
「そんなの絶対嫌だ」
「だろ?」
ログチーがふっと笑う。
「それが、シルバーだもんね」
「でもどうするの?」
「どうするもこうするも――」
そう言いながら、自分の手を見る。
絶対に助けられる保証はない。
けど、放ってはおけない。絶対に!!
考えろ。
俺に何が出来る?
過去に戻れば坂中は救えるはずだ。
だけど――
大地はどうなる?
俺は一人しかいない。
「クソッ……」
頭を抱える。
何か方法はないのか、同時に助ける方法。
そんな都合の良い方法なんてあるわけ――
「……あ」
ひとつだけ方法があるじゃないか……
ある光景が頭をよぎる。
トイレ。
吐き気。
あの視界が揺れる感覚。
二度と使わないと決めた力。
ログチーが首を傾げる。
「シルバー?」
ピアスの力。
使えばまた何が起こるかわからない
それでも――
坂中、大地、2人を助けたいなら、
ログチーが俺を見る。
「シルバー、本当にやるの?」
「ああ…」
吐くかもしれない。
倒れるかもしれない。
また身体が悲鳴を上げるかもしれない。
それでも――
「やるしか……ねぇ!」
「選択肢?そんなもん、選んでられるか!」
俺は覚悟を決め、ピアスに手をあてた――




