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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮
動き出す気持ち

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59/64

食うか、食われるか

俺は今、アルカにいる。

そう、あのコミュ障男クロノスの店。



てか、なんで俺はこんなところで大量の

皿洗いをさせられているんだ?



意味わからん。



腕時計はもちろん外している。

バグられても困るしな……



スポンジの泡が目に入る。



「……くぅ」


こんなことやってる場合じゃないのに……


「ああっ!クソッ!終わんねー!!」


「てか、食器洗浄機買えよ……」


皿を一枚、さらに一枚と洗っていく。


水が冷たくて、手がかじかむ。


「あと少しか……キッツ」


指の痛みを我慢しながら、ただひたすらに

皿を洗った。







気づくと後ろにクロノスが立っていた。


「……っ!?」 


「俺の背後に立つな!!目で殺す気か?」



なぜかクロノスの口元が緩んでいる。



「キモ!」



そう言うと、クロノスは少し暗い顔をする。


「……相変わらず面倒くせぇ奴だな」





クロノスが静かに呟く。


「……終わったらこっちへ来い」


それだけ言って

クロノスはカウンター側へ戻って行った。







その後、店内――


大量の皿洗いを済まし、クタクタになりながら

カウンターに座る。


クロノスに声をかけるが何も言わない。


カウンターからバターのいい香りがする。

気づくと目の前には大盛りのオムライスが

置かれた。


ソースには

『ありがとう❤︎』と描いてある。





ゾワゾワ……

思わず帰りたくなった。




「……食え」



「ちょっと前に弁当食ったし、いらな――」


クロノスが顔を近づけてきて言う。


「食え」


(圧……てか、暑苦し。いちいち面倒くせぇ)


「……はぁ」


スプーンを取り、オムライスを一口食べた。


「なんだこれ……」


「うまっ」


思わず夢中で平らげる。


視線を上げると

クロノスが不気味な笑みを讃えている。


(だからその顔やめろ!)


「ごちそうさまでした!」


オムライスを食べ終わり、

再度クロノスに尋ねる。


「クロノス、もういいだろ?教えてくれ」


「一体何が起きてる?」


「このカード、意味がわからねぇ」


カードには残り44:25と表示されている。




「連鎖のはじまりだ……」


「だから、それが何の――」


「坂中の、クラスメイトの名前があったんだ

ほっとけないだろ……」


「何もないならいい。だけど……

嫌な予感しかしねぇんだよ!」


「頼む……クロノス」



クロノスは答えずに、そっとカウンターから

何かを出した。



「今日の対価、報酬だ。また来い」



そう言って、強制的に店から追い出された。




「は?」





気づくと、俺は中庭の中にいた。


「クロノスの奴……」


「あーーー!!腹立つ!!」


息を少し整えてから、さっき渡されたものを

見る。


茶色い封筒――


お金にしては薄っぺらい。


少し考えて、

俺はそのままポケットに押し込んだ。


後にしよう――

あいつが渡すもので、ろくな目にあった

記憶しかない。




時計を見ると16時過ぎ。

残り時間は44:10



「皿洗いが無駄だったな、クソッ」



とりあえず出来ることからだ。

坂中の足取りを辿ろう。


「ログチー!戻るぞ!」


「昨日の夜へ!」


「うぃ」


「じゃあ、行くよー!」


「オイッ!ここではやめろ!」


「見られたらどうする!?」


腕時計を思わず掴んだ時――

後ろから声がした。




「何してるの?」


振り返ると佐伯がそこに立っていた――

(なんなんだよ、今日の俺の見つかる率)



「さ、佐伯」



「い、いや、別に……」


言いながら、頭を掻く。


「今日は中庭でサボってたの?」


悪戯っぽく、微笑む佐伯。


何だか気まずくて、目を逸らす。


「サボってねぇし、そう用事だ!用事!」


「……用事ってなんの?」


「へ?……それはあれだ。ちょっとまあ

ちょっと色々とあってだな」


「……嘘つき」


図星をつかれて、少し顔がひきつる。



「そ、そんなわけねーだろ!俺は嘘なんか

つかねぇ……」


「ふーん、そうなんだ」


(なんか見透かされるようで怖ぇ……)


「てか、もうお前帰れよ!終業の鐘鳴っただろっ」


「そういう黒川くんは?帰らない、の?」


「……俺は、その、あれだ、うん」


「なあに?」


探るような視線で俺を見る。



「俺は……い、今から、桐生の説教部屋だ」




「……プッ」




「わ、笑うな!桐生のやつは面倒くせぇから!」


「遅れるし、またな」


少し笑った後、佐伯が俺の名を呼んだ。


「ん」


振り返る。


「……気をつけてね」


「あ、ああ……」

(桐生の心配か……)


佐伯に後ろを向け、校舎に入る。

誰もいない部屋。


息を吐いて、顔を叩く。


「今度こそ、ログチー、行くぞ」


「うぃ」


俺の姿がもう一人の自分へ変わる。


シルバーとして、手がかりを探しに――

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