不在の学級委員
教室に戻ると、妙な静けさが漂っていた。
白石を見ると顔が真っ青になっている。
さっきのメッセージと何か関係があるのか?
俺はポケットの中のカードを握りしめた。
カードの熱が、まだ指先に残っている。
そうこう言ってる間に一限目が始まる。
一限目は誰の授業だっけ?
教室に入ってきたのは数学担当の山﨑(ざきやま)
だった。
(またお前かよ!)
目線が合わないよう視線を逸らした。
逸らした先には白石が見えた。
何となく具合が悪そうに見える。
(まあ、俺が気にする必要もないんだけど)
ふとため息をつき、目線を前にやると
ザキヤマと目が合った。
(げっ!)
無意識に眉をひそめる。
が――
ザキヤマはこっちを見て赤くなっていた。
気持ち悪っ
再度視線を逸らす。
視線の先は空席。
あそこなたしか、坂中の席……
でも当の本人はいない――
坂中って目立たないけど、毎日来てる
イメージだったのに。
まあ、たまには休む日もあるか……
重い瞼をどうにか押し上げながら、
授業を真面目に受けた。
昼休み――
昼飯をいつものメンバーで食べる。
「おっ!紫音、今日唐揚げ入ってんじゃん!もーらい!っと」
佐藤が、俺の好物の唐揚げを奪う。
「コラッ!取るなよ!仕返しだ!」
そう言って、佐藤の卵焼きを奪う。
「美味っ!」
「うまい!」
お互いに言う。
「お前ら、静かに食え!」
山田呆れ顔で言う。
「ははっ」
ふと大地を見ると、珍しく弁当に手をつけずに
一点を見つめている。
視線の先には
白石がいた。
「大地、食わねーのか?」
声をかける。
「あ、ああ……今から、食う……」
(このヘタレめ、これは俺が人肌脱ぐしかないのか?)
大地だけ聞こえるように耳打ちする。
「気になるのか?白石の様子」
「……っ!?」
図星をつかれたかのように真っ赤になる大地。
(わかりやす……)
「お前、話しかけてこいよ」
「いやいやいや、無理!」
「一緒に行ってやるから、さ」
大地はコクコクっと嬉しそうに頷いた。
佐藤と山田がニヤニヤしながら
こっちを見ていたが、無視して二人で
白石の元に向かった。
「白石」
声をかける。
「……黒川くん……と長瀬くん」
やはり顔色が悪い。
「ちょっと外で話さねぇ?」
三人で、中庭で話す。
大地は隣でモジモジしていた。
白石に聞こえないように小声で話す。
「おい、お前ちょっとしっかりしろよ」
「……緊張して、クラクラする」
「は?しっかりしろよ!」
無言で俯く白石。
横で俯く、大地。
(うわ……めんどくせぇ)
思わずため息が漏れる。
「白石、顔色悪そうだけど、大丈夫か?」
白石が顔を少し上げる。
「だ、大丈夫……」
「坂中のことか……?」
「えっ何で……?」
「いや……朝に話してるのがたまたま聞こえて、さ」
「あ、言っとくけど、わざと聞いてたわけじゃないから、な?」
キョトンとした顔で白石がこっちを見る。
「ふふっ」
白石が微笑む。
横で大地が、さらに顔を赤くする。
「で?坂中とは連絡ついたのか?」
白石は首を横に振る。
「LINEしたけど、未読のままなの……
こんなこと初めてで……」
少し涙ぐむ白石を見て、何も言えない俺を横目に
大地が照れくさそうに白石にハンカチを手渡す。
「あ、ありがとう」
「いや……ははは」
(……お邪魔虫は去ろう)
二人を背を向け、歩き出す。
ポケットに手を入れると、僅かにまた
カードに熱が帯びている。
カードを見ると
『1人目、坂中歩』
『48時間以内』
『忘却』
「……っ!?」
背筋に冷や汗が走る。
さっき見た
『連鎖の始まり』というメッセージ。
身体が強ばる。
でもこのまま放っておくことは出来ない。
午後の授業を受けてる場合じゃない。
俺は手がかりを求めて、あの場所に向かうことに
決めたのだった。




