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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮
動き出す気持ち

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54/65

騒動の終焉

※冒頭に少し過激な描写があります。お食事中の方はお気をつけください。

俺は口元を押さえ、

全速力で校舎へ駆け込む。


そう、

ひたすらトイレを求めて――


「う、ぐっ……」


視界が乱れ、頭がクラクラする。


喉の奥まで、

一気に酸っぱいものが込み上げてきた。


(やっべ……!!)


「シ、シルバー!?」


ログチーが慌てて服の中で暴れる。


「んん、ん…んな!」

(今、喋んな!)


階段を飛ばし、トイレへ直行。


バンッ!!


個室のドアを閉めて、

そこにある便器と向き合った瞬間――


「おえぇぇぇぇぇ……!!」



「うわぁ……」


ログチーがドン引きした声を出す。


「んるへぇ……」

(うるせぇ……)





便器に突っ伏したまま、

荒い呼吸を繰り返す。



頭が痛い……。


吐いたのにまだ胃がムカムカしている。


(最悪だ……)


「……はぁ……はぁ……」


「分身なんか……もう二度とやらねぇ……」


拳を握りしめながら、俺は誓った――




そして、第二波が来る。

相手がログチーとはいえ、俺は最悪の瞬間を

晒した――







どれぐらい時間が経ったんだろう。

便器に突っ伏していた俺は、

ようやく個室から脱出した。



分身も消えたので、俺は誰もいないことを

確認し、「revert」と呟く。



ふと、鏡に映った自分を見る。


「アレ?」


疲れた顔をした俺がいつもの制服を

着ている。


「なんで……?分身が着てたハズじゃあ……」


ログチーがクスッと笑う。


「そこはオレのチカラに決まってんだろー

感謝したまえ、シルバー!」


口を開けずに俺は返す。


「調子乗んな!」


ログチーは沈黙した。


トイレを出て、夕方の校舎内を歩く。


カバンを取りに教室へ向かった――







教室前――


中を覗くと誰もいない。


(ホッ……)


そそくさと中に入り、カバンを取る。


「はぁ……」


「さて、帰るか!」


教室を出た瞬間――


目の前に桐生が立っていた。


(……既視感?)


「黒川……見つけたわよ?」


「え……?」


無意識に身体が固まる。


「今日という今日は、逃がさないわよ?」


桐生がニヤリと笑う。


膝から崩れ落ちる俺。

頭を押さえながら、俺は脳内で叫んでいた。


なんて日だーーーーーーー!!!




…………




桐生に散々説教され、完全に日が落ちた。

時刻は19時。


フラフラになりながら、

俺はようやく家へ辿り着く。


玄関を開ける。


「ただいま……」


リビングから母さんが顔を出す。


「おかえりなさ……紫音!?」


母さんが心配そうに俺を見て駆け寄ってくる。


「あなた、顔真っ青じゃない!」


「孝之さん、ちょっときてー!!」


母さんが焦った声で父さんを呼ぶ。


「……ちょっと疲れただけだって!」


「ちょっとでそんな顔になる!?」


父さんもリビングからこっちにくる。


「どうした?由紀子、あれ紫音、おかえ……」


「……顔が真っ青じゃないか!?」


父さんも暑苦しい感じで駆け寄ってくる。


「……だ、大丈夫だって!

たく、大袈裟なんだよ……」


強がってみたものの

正直言って、靴を脱ぐのもしんどい。


その場に座り込みそうになる。


「紫音、ダメだ!」


父さんが俺を無理やり担いでそのまま

リビングへ連れていかれる。


そっとソファーへ寝かされる。


目を開けると、二人が心配そうに俺を

見ている。


「紫音、お粥なら食べれる?」


「紫音、たまには父さんと風呂に入ろうか?」


父さんが言ってることがよくわからないが

まあいつものことだ……


ホッとしたのか俺は無意識に笑う。



額に、冷たいタオルが乗せられる。


「っ……」


気持ちいい。


「……母さん」


「なあに?」


「……今日さ」


そこで言葉が止まる。


分身のことも、吐いたことも、

そんなこと言えるわけがない


「……いや、何でもない」


母さんは小さく微笑む。


「今日は朝から少し変だったものね」


「……?」


「変って?」


「そうねぇ……」


母さんは思い出すように俺に言う。


「なんか変に素直だったし、

制服も珍しくボタン止めてたし……」


「紫音の偽物なんじゃないかって

ちょっと思っちゃたわ。おかしいわよね」


「だって……」


「あなたは世界でたった一人しかいないんだから、ね?」


ふふっと母さんが笑う。


「由紀子も世界で一人しかいないな」


父さんが頷く。


「はいはい」


母さんはそれを流すように聞いている。


「はは……」


母さんの言葉を聞いてホッとしたのか

俺は重たい瞼を閉じる。


今日は本当に、疲れた。


長い長い一日が終わり、

俺はそのまま眠りに落ちた――

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