意外な一面
校舎の端で、ひたすら落ち葉を掃く。
掃いては捨て、
掃いては捨ての繰り返し
「……はぁ」
(何やってんだ俺……)
隙を見て逃げる算段だったが、桐生が
ずっと監視してやがる……
「……クソッ」
ログチーが服の中から囁く。
「シルバー、貞操の危機だね」
ゾワッ
「縁起でもないことを言うな!」
「サボらず、さっさとやんなさい!」
「は、はひっ」
俺の必死さなのか、桐生の押しに負けたのか
落ち葉まみれだった校庭が見違えるほどに
綺麗になった。
「あら、アンタ、やれば出来んじゃない」
「……ま、まあ……」
(お前だろ!お前がずっと監視してたから!)
暑さに耐えきれず、上着を脱ぐ。
汗でシャツが肌に張りつく。
「ん?」
何か、視線を感じる。
「……ッ!?」
桐生が俺をマジマジと見ながら
「アナタ……身体までイケてるわね」
「✕〇※▽〜✕※※!?」
(さらば……俺の貞操)
観念したように俺は目を瞑る。
「ほら!」
「……ん?」
そっと目を開けると
手作りだと思われるおにぎりが
目の前にあった。
「アナタ、お腹すいてるでしょ?」
「よく、頑張ったわね」
「見直したわ、派遣青年!」
背中をバンバンッと叩かれる。
目の前のおにぎりを口にする。
「……うまっ」
桐生は少し照れくさそうに視線を逸らす。
「それ食べたら帰っていいから、ちゃんとサボらずにまた来なさいよ」
お茶のペットボトルを置いて、桐生は
その場から居なくなった。
「てか……俺はその派遣社員ではないが……」
空を見上げる。
少しだけ――
ほんの少しだけだけど、
気持ちが落ちついた。
おにぎりを食べ終え、
お茶を飲む。
「……ふぅ」
その時だった。
――バタバタバタッ!!
(なんだ!?)
「紫音ー!」
聞き慣れた大地の声。
「っ!?」
俺は反射的に顔を隠す。
校舎裏へ飛び込んできた大地は、
息を切らしながら、俺を見る。
「あ、すんません」
「こっちに、俺よりちょっとだけ……
いやいや、俺ぐらいの黒髪のイケメン、来ませんでしたか?」
(……自分でイケメンて……バカだな、コイツ)
「さ、さあ?ここでは見て、いない」
誤魔化すように帽子を目深に被る。
「はぁ……」
大地がため息をつく。
「……アイツ、あ、探してる奴さ」
聞いてもないのに、話し出す大地。
「今日、何かいつもとさ、違うんだよなぁ」
「……」
「……アイツはもっと生意気でさ、なんていうか一緒にいるとすげぇ楽しいんだ」
「そんなこと、アイツに口が裂けても言わねぇけど……って」
「てか、何で俺、見知らぬお兄さんにこんな事――」
大地が目を見開く。
「……?お兄さん、泣いてる……?」
帽子を目にやる。
「これは……ちょっと落ち葉が目に入って……」
大地を見て言う。
「……その黒髪の奴さ……」
「えっ?」
「多分それ聞いたら、喜ぶと、思うぜ……」
そう言って、大地を背にしながら
俺は歩き出した。
先に進んだところで誰かにぶつかる。
「ごめん……」
前を向くと見覚えのある顔。
「……っ!?」
目の前の分身は、観念したのか
勢いよく土下座――
「シルバー様ァァァ!!
申し訳ありませんでしたァァァ!!」
「は?」
思わず固まる。
分身は、地面に額を擦りつけながら叫ぶ。
「僕は良かれと思い、
黒川紫音代理として誠心誠意、
学生生活を送っておりました!!」
「でも……もう無理です!」
「女の子がなんかめちゃくちゃ寄ってくるんですよ……身体がなんかゾワゾワして……蕁麻疹が
出てますぅ〜」
「知らねぇよ!!お前が勝手にやったんだろ!」
「てか、その顔で土下座やめろ!」
「シルバー様は毎日この修行をしてるんですね、
やはり僕は敵いません!」
「やってねーから!人をチャラ男扱いすな!」
ログチーが服の中で笑いを堪えながら
震えている。
「ログチーも、いちいち反応すんな!」
分身は涙目で顔を上げる。
「シルバー様!
どうか私にトドメの一撃を!」
「嫌だよ!」
「時間が経てば消えるのに、今お前を気絶させたら、俺にも影響があるんだからな!」
「お前の責任でやり通せ!俺は帰る!」
「薄情すぎません?」
思わず拳に力が入る。
「俺の顔でその気持ち悪い顔をやめろっ!」
言ったと同時に
野球部の暴投が分身の頭に直撃し、
俺の分身は消えた――
が、
ものすごい吐き気が襲ってくる。
これが、術者の代償かよ……
俺は吐き気を抑えながら、学校のトイレに
全速力で走るのだった――




