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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮
動き出す気持ち

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51/65

俺じゃないのに……

校門前――


俺は茂みからそっと様子を伺っていた。


(……俺、何やってんだろ)


小さく息を吐く。


校門を見ると、分身(にせもの)と大地が

中に入って行くのが見えた。


「……よし、行くか」


周りを見渡してから、そそくさと中へ入る。


人通りの少ない場所を通り、屋上へ向かった。







屋上――


冷たい風が吹いている。

今のところ誰もいない。


屋上から下を眺める。


「落ちても……まあ、死にはしねぇだろ、

多分……」


「……いや、普通に怖ぇ……」


顔を左右に振りながら、顔を叩く。


「……シャッ」


チェーンを引っかけながら、そろそろと

降りて行く。


ログチーがポケットから顔を出し名前を呼ぶ。


「シルバー」


「何だよ?」


「落ちないでね?」


「……」


「縁起でもないことを言うな!」


ログチーが続けて話す。


「ママさん、泣いてたでしょ?」


「心配かけたらダメだよ?シルバー」


「……わかってる」


俺は小さく返事をした――









3階2ーA付近――

足場は狭いものの、ゆっくりと外側から

怪しまれないように、窓を拭いた。


中をそっと覗く。


(うわ……よりによってザキヤマの授業かよ) 


ヒヤヒヤしながら様子を伺う。


「……珍しく起きてるな、黒川」


(よりによって当てられてるし……)


「はい!先生の授業、とても為になります」


笑顔で分身にせものは答えた。


ゾクゾクッ

何だよ、その顔……気持ち悪っ




「ん?」


(何だ……?教室の様子が?)



「……く、黒川、聞いてるならいい」

(なんだ、黒川が可愛い……キュン……)


クラスの女子達

(……何、今の笑顔……キュン……)


「キャー!斎藤さんが倒れたわよー」


「……先生、谷口くんが鼻血出してます!」




…………



(なんじゃそりゃあああああ?)


思わず叫びそうになるのを抑えた。


「……シルバー、普段笑わないのも考えものだねぇ」


「いや、関係ねーだろ!」


無意識に、蒼乃に目が行く。


蒼乃は真っ直ぐ前を見ている。


(なんだよ、その顔)


(みんなも、なんだよ……気づけよ!)


身体から力が抜けたように

手から雑巾が落ちていった――





「シルバー、大丈夫?」


「ねぇ?」


「……なんか、疲れた」


「えっ?」


「帰るわ……」


「……シルバー?」




チェーンを使って屋上に戻る。


何とも言えない気持ちのまま、俺は

しばらく景色を眺めていた――



〜空 side〜


昨日見たニュース、紫音くんだったよね。


顔はハッキリ映ってなかったけど……

絶対紫音くん。


昨日の態度を謝って、あと大丈夫か聞いて

あとは……もっと彼のことが知りたい。


「よし!頑張れ!私!」


空は軽く拳を握った。




教室――


何だか、中が騒がしい。


あ、いた……


声をかけようとした時、先に別のクラスメイトが

彼に話しかけた。


「黒川くん、昨日大丈夫だったの?」


あれは……

屋上にいた人……



笑顔で話す二人を見て、胸がチクッと傷んだ。


席に座る。


「蒼乃さん、おはよう」


「おはよう……」


何人かのクラスメイトに挨拶されながらも

視線は前の彼を見てしまう。


そんな笑顔、みんなに向けないでよ。

なんか、嫌だ……





休み時間になっても、紫音くんは女の子に

囲まれてて、話せない。


誰にでも優しいんだ……ね。


耐えきれなくなり、教室を飛び出した――





〜紫音side〜


屋上――


「帰るか……」



屋上から中に入るドアを開けると

目の前に蒼乃が立っていた。


「は?」


「え?」


お互い向き合うような形で声が出た。


「あ、すみません、お掃除中でしたか?」


思わず視線を避け、鼻を詰まみながら

返事する。


「い、いやぁ、ここはもう……」


蒼乃の顔をチラッと見る。


(……アレ?なんか、表情が暗い?)


「……何かあったんすか?」


「え……?」


蒼乃がこちらを向き、いきなり腕を掴んできた。


「……っ!?」


「お兄さん!ちょっと聞いてもらえます?」


「は?」



一瞬固まる。



「い、いや……それは」


上目遣いで見てくる蒼乃。


思わず目を逸らす。


「…………」


「まあ、ちょっとだけなら……」


「お兄さん、ありがとう」


フワッとした笑みが溢れた――


二人で、昇降口に座る。


蒼乃との距離が近い。

甘い匂いがふわっと鼻をくすぐる。


俺は無意識に頭を掻きながら、尋ねてみた。


「……で?」


「私……」


「仲良くなりたい人がいるんだけどね」


(仲良く、なりたい人か……)


「その人誰にでも優しくて……」


(大地、か……)


「私だけに優しいわけじゃないんだ……って思ったらさ、何かやり切れなくなっちゃって……」


「……そっか」


寂しそうに呟いている蒼乃を見て俺は

じっと話を聞いているしか出来なかった――

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