両親の温もり
自宅――
「ただいまっ……と」
靴を脱ぎ、ダイニングを覗くと、
なぜか母さんが怒っている。
「紫音…おかえりなさい」
(何だ……この威圧感……)
今日は珍しく父さんもソファーに座っている。
「お、今日唐揚げじゃん!」
匂いにつられて、テーブルを見た。
「紫音!」
母さんが、怒った様子で名前を呼ぶ。
「……わかってるって、ちゃんと手を洗ってくる……」
言い終わる前に、母さんが静かに話す。
「後でいいからとりあえず座りなさい!」
(なんか、すっげぇ怒ってる?)
母さんが目の前に、今日の夕刊を置いた。
「これは何?」
「ん?」
「……新聞?」
俺は首を傾げる。
溜息をつきながら母さんが、
新聞の一部をトントンと指で叩く。
(……たくっ、何なんだよ)
指で差された場所を見てみる。
「……っ!?」
「……見た、わね?」
新聞の一面に『謎の高校生の救出劇』
思わず目を見開く。
(まずい、映ってる!)
「……はは、何か俺みたいなのが、映ってる……
に、似てるな」
母さんが、テーブルをバンッと叩く。
思わず、ビクッとなる。
「お母さんが息子の顔を間違えると思う?」
真っ直ぐに俺を見つめてくる。
(……うっ)
誤魔化すように視線を逸らし、
「……よ、世の中にはさ?よく似た人が3人いるってよく言うじゃん?」
そう言った瞬間、畳み掛けるかのように
「じゃあ、残りの2人を連れてきなさいよ」
「は?」
「……そんなの無理に決まってんじゃん!」
「父さんには4人いるぞ?」
横で、父さんがよくわからないことを言う。
母さんが睨む。
「あなたは黙って!」
「はい」
「ああ、でも探すの大変だぞ?」
母さんが再度父さんを睨んだ。
「じゃあいい加減認めなさい!」
「いや、おかしいだろ!!」
(俺なんだけども……)
父さんがフォローにならないフォローをする。
「紫音、おかしい時は笑えばいいと思うぞ?」
「そのおかしいじゃねぇし!」
母さんが、ふぅと溜息をつく。
「紫音……」
「お母さんほんとにほんとに心配したのよ?」
「お願いだから……危険なことはしないでほしいの」
「……ねっ?」
視線を下に向けたまま頭を掻く。
手は無意識に鞄を開けていて
例のスマホが鞄から落ちた………
「……っ!?」
(やっべー!!)
慌てて背中に隠すが、既に見られている。
「なんなのそのスマホ!!」
「いやぁ これは……」
「あなた、怪我してるとかじゃないでしょうね」
母さんは心配そうに俺をマジマジとみる。
怪我がないのを確認すると、
ホッとしたように呟く。
「ほんっとバカ息子……」
バシンと頭を叩かれる。
「いってぇ……」
手で頭を押さえる。
「スマホだけで済んで、良かった……」
「あなたがバラバラにならなくて……ほんとに良かった……」
母さんは、俺を軽く抱きしめた。
父さんが母さんの頭をぽんと撫でながら
「スマホも人生も、割れる時は派手にいけ!」
「は?」
「行くかぁ!!」
母さんと俺が同時にツッコんだ。
父さんは、ハハハと笑いながら
「母さんをあんまり心配させるなよ」
と言いながら、そっと母さんの涙を拭った。
そんな二人を見て、ふっと笑いながら
俺は素直に二人に頭を下げた。
「……ごめん、反省してます」
父さんと母さんが顔を見合わせて微笑んだ。




