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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮
運命の再会?

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不意打ちの笑顔

「……プッ あははっ」


沈黙を破るかのように、空がクスクスと笑う。


「……何、なんでそんなにボロボロなの?」


空は、笑いをこらえながら、聞いてくる。


「……別に。まあ色々あんだよ」


人差し指で、そっと鼻を掻きながら、


乱暴にスマホをポケットにしまう。


「……ふーん」


空はまた顔を覗きこむように俺を見る。


「……じゃあ、これ」


小さなカード

名前と電話番号とLINE IDが書かれている。


「……っ、い、いらねー」


手で押し返す。


空は、少し頬を膨らましながら、


「……私が受け取って欲しいの!!」


無理やり手に握らせてくる。


目の前に人差し指を突き出しながら


「言っとくけど、誰にでも渡してるわけじゃないんだからね!」


「……あなたに、持っててほしいから……」


上目遣いでこちらを見る。


(うっ……)


「……たくっ……うるさい奴だな……」


視線を逸らしながら、少し乱暴に受け取る。


「……言っとくけどなー?」


「ただ、そう、持ってるだけだからな!」



空は嬉しそうに笑いながら


「……うん!」


と、返事をした。



(……なんなんだよ……こいつ)


(調子狂う……)



公園ベンチ――



「……なあ?」


「……えっ?」


バスケットゴールを指差す。


「バスケット、好きなのか?」


「……う、うん。そうなの!」


急に身を乗り出し、顔を近づけてくる。


「……近いって!」


手で押し除ける。


「……あっ、ごめん、つい……興奮しちゃって……」


「……それで?」


空は俯きながら


「……あ、うん。好きだから上手くなりたくて練習するんだけどね」


「でも、全然上手くいかない……」


悔しそうに呟く。


表情がコロコロ変わるのが、何だかおかしくて

つい笑ってしまう。


「……プッ」


空がこちらを向き、ちょっと睨む。


「あ、今笑ったでしょ?」


「……あ、ははっ、ごめん。つい……」


笑いを少しこらえながら空を見る。


「アンタのはさ、フォームが悪いだけ」


「……えっ?」


「まあ、見てろよ」


そう言って、俺は立ち上がる。


ボールを軽く、ドリブルしながら

ゴール前へ向かう。


その背中を、

空はじっと見つめていた。


朝日が差し込み始めた公園。


黒髪が風で揺れる。


そして――


ダンッ


きれいなフォーム。

まるで羽根がついてるかのように、

身体がふわっと浮く。


軽く跳んでいるだけに見えるのに――


ボールは、

吸い込まれるみたいにリングへ落ちた。


「……わあ……」


空が目を見開く。


まるで子供みたいに、

キラキラした目でリングを見上げていた。


「ほら、簡単だろ?」


挿絵(By みてみん)


朝日を背にしたその笑顔が、

空の目には、すごく眩しく見えた。


「……反則……」


「……ん?」


「何か言ったか?」


空は首を左右に振りながら、俺の袖を掴んだ。


「……教えて!」


「……は?」





時刻は6時40分――


「……以上!! 今説明した通りにやってみろよ」


空が頷く。


真剣な横顔。


ボールを投げる。


ボールは綺麗な弧を描きながら、ゴールポストに


ザシュッ!!


「……入った!!」


二人同時に呟く。


お互い顔を見合わす。


無意識にハイタッチする。


「……頑張ったな」


ふわっと微笑む。


「……だから、反則だって……」


「……?」


時計を見る。

いつの間にか、7時を過ぎている。


「……そろそろ帰るか?」


「……えっ?」


「えっ?ってアンタも学校だろ?」


「……うん、まあそうだけど……」


下を向いてもじもじしている。


「……うるさくなったり、静かになったり、よくわかんねー奴だな」


頭を掻く。


「……そんなこと……ないもん」


「ねぇ?」


「ん?」


空が、少しだけ不安そうにこちらを見る。


「もし、もしね?」


「うん?」


「また会えたら――」


空は自分のパーカーの端をぎゅっと掴みながら


「……今度こそ、運命だよね?」


「……っ」


言葉が詰まる。


朝日を背にした彼女の笑顔が、

妙に近くて、眩しくて、


心臓が、少しだけうるさかった。


「……じゃ、もう行くから!……またな!」


誤魔化すように背を向ける。


「……ふふっ」


(また……って言った)


後ろから、嬉しそうな笑い声が聞こえた。





――自宅


「紫音ー? 公園行ってたのー?

そろそろ学校の用意……」


「……わかってる!」


階段を足早に上がる。


部屋に入った瞬間、ドアにもたれる。


「……はぁ、なんなんだよ、アイツ……」


ポケットの中。


小さなカードを、

俺は無意識に握りしめていた――



「甘あぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」


時計からのログチーの声すら、

その瞬間だけは、聞こえていなかった。

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