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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮
放っておけない

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37/66

ハッタリと苛立ちと

慎重に、屋上から下へ下へと降りて行く。


ビルの裏側、店舗とは反対側の窓。


外から覗いてみる。


事務所っぽい部屋。


中の様子を伺うが、人の気配はない。


「侵入するなら、ここか?」


窓が開いてるか確かめてみるが、

鍵がかかっている。


「……だよな」


窓を軽く叩く。


「……普通のガラスっぽいな」


思わず口角が上がる。


スマホを出す。


そして、思いきり鍵部分に向けて

スマホの角をぶつけた。


パリィィン!!


窓が小さく音を立てた。


(げっ!スマホも割れてる……)


割れたスマホの画面を見ながら呟く。


「……俺って不憫だよな……」


ボソっと呟く。


「……今更?」


ログチーが首を傾げる。


「……」


少し肩を落としながら、空いた穴から鍵を開け

中に潜入した。





―事務所内。


周りを見渡す。


ソファーに小さい机。

本棚。

デスク上にパソコン。


机の引き出しを開けるが、特に気になるものはない。


パソコンの電源を入れる。


パスワードを入れてくださいの表示。


「……だよな」


ガタッ


扉側に人の気配―


デスクの下に隠れる。


声がヒソヒソと聞こえる。


「……やめて、下さい」


(佐伯?)


影からそっと様子を見る。


「……っ!?」


昼間の男……?

暗くてよく見えない。


「……昼間の件は許してあげるよ」


「その代わり……わかるよね?」


まとわりつくような男の声。


間違いない……奴だ!


椅子を蹴る。


男がこちらを見る―


白いマントが窓から吹く風でふわりと揺れる。


「……誰だ?お前は……?」


月の光で逆光になり、顔は見えない。


俺は、男を見下ろしながら答える。


「俺?」


口角を上げながら


「―シルバー」


「銀の怪盗だ」


「……彼女からさっさと離れろ!」


男は驚き、助けを呼ぼうとドア側へ走る。


「……逃げられると思うなよ?」


チェーンワイヤーを男に向けて投げる。


ワイヤーが男の身体に巻き付く。


佐伯に向かって叫ぶ。


「今の内に逃げろ!」


佐伯がビクッと驚いた後、こちらに一瞬視線を

向けて、ドアから出て行く。


男が叫ぶ。


「……離せ!!」


(よし、行ったな)


「……」


男を見下ろす。


「……離すと思うか?」


低めの声で静かに言う。


ワイヤーを手繰り寄せ、  

男を無理やりデスクの椅子へ座らせる。


男の首元に、そっと鋭利な何かをあてる。


「……ひぃ!」


男が悲壮な声を出す。


(……これ、ただのSuicaだけどな……

チャージしてないけど……)


「……金か?女か?」


「……い、命だけは……たっ助けてくれ」


男が懇願してくる。


「……そんなもの、いらない」


軽く首を振る。


男の首元にあてた手に少し力が入る。


「……欲しいのはデータだ」


「……パソコンにあるデータ、出してもらおうか?」


男は、コクコクと頷き、パソコンを叩く。


中には、色んな女の子の写真や動画が生々しく  

保存されていた。


「.……っ!?」


(不快すぎる……)


「この……ゲス野郎が!」


思わず、ワイヤーを強く締める。


男がうめき声をあげる。


「ゆ、許してくれ……頼むっ」 


男が苦しそうにもがく。


「全部消せ!!早く!!」


男がdeleteボタンを押す。


「…全部…消した…消し…から、許して……」


(キィィィィン――!!)


耳を貫くような不協和音。


「……くっ」


痛みで、手が緩む。


男がその隙に、壁側に俺を押し付けて、首を

締めてくる。


「……うっ……ううっ……」


(息が……で……きない……)


手からSuicaが落ちる。


「……何だ?ハッタリだったのか?」


男が狡猾に笑いながら、さらに力を入れる。


その時―


「……ギャァァァァ」


ログチーが思い切り、男の股間を噛んでいた。


男が我慢しきれずしゃがみこむ。


「……シルバー、これ!」


ログチーが男のスマホを投げる。


男が叫ぶ。


「……やめろー!!それだけは……」


ピアスが反応しない。


「……今度こそ、ビンゴか」


息を整えながら、男を見下ろす。


スマホを強く握る。


「や、やめ―」


バキィッ!!


男のスマホを思い切り床へ叩きつける。

画面が砕け散り破片が飛び散る。


俺は怒りをぶつけるかのように

何度も何度もスマホを足で踏み潰した。


スマホは完全にゴミと化した。


「……俺の、データがああああ」


男が叫ぶ。


その叫びを遮るかのように、俺は強く叫んだ。


「……お前のものなんて、最初から何ひとつねぇんだよ!」


「……よーく、覚えとけ!」



静まり返った部屋の中で、男は月の光に

照らされた銀の怪盗を見て、ガクッと頭を垂れた。





近くからパトカーの音。


警察官が店に到着した頃には

俺は既に窓から脱出していた―


男をワイヤーで縛り上げ、頭にメモを貼っておいた。


「犯人」

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