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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮
帰れない

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27/65

命の恩人は?

ドアが、静かに開いた。


その先にいたのは――


クロノスだった。


「……クロノス?」


思わず声が出る。


「……ってことは、ここ……あの店か?」


「……アルカだ」


低い迫力のある声で短く答える。


「シルバー、クロノスさんが助けてくれたんだよ?」


ログチーが嬉しそうに言う。


クロノスは表情を変えないまま、紫音を見る。


「……動けるなら、降りてこい」


それだけ言って、背を向けた。


クロノスが去った後⸻


「……ふぅ」


(相変わらず、圧がすごいな……)


ログチーを横目で見る。


「……お前、あの人苦手じゃなかったっけ?」


「……顔が怖いだけ、みたいだよ」


少し照れくさそうに笑う。


「誤解してたかな?って感じ」


「……なんだよそれ」


小さく笑いながら、ふと気づく。


「……てかさ、お前なんでその姿なんだ?」


ログチーは少し考えてから口を開いた。


「……シルバーに声が届かなくなって……」


「怖くなって……動きたいって……」


「……そう強く願ったんだ……」


「そしたらね」


「気づいたらこの姿になってた」


ログチーが嬉しそうに笑う。


「……そっか」


つられるように、紫音も小さく笑う。


「……さて……と」


「……行くか」


ドアを開ける。


薄暗い電灯が、階段をぼんやり照らしていた。


足元を確かめながら降りていく。


一番下のドアを開けると――


クロノスが、静かにこちらを見ていた。


特に言葉はない。


ただ、ゆっくりと左へ視線を向ける。


つられて視線を動かす。


そこには――


料理が並んでいた。


唐揚げ、ハンバーグ、エビフライ。

コーンスープにサラダ。

白いご飯と、柔らかそうな白パン。


(……これ、俺の好物ばっかりだ……)


「……これ、もしかして」


クロノスを見る。


「俺のために用意してくれたのか?」


「……食え」


短い一言。


いそいそと席に着き、手を合わせる。


「いただきます」


箸で唐揚げを掴み、口に運ぶ。


「……っ、うま……」


噛み締めた瞬間、視界が滲んだ。


クロノスは、何も言わずそれを見ている。


「シルバー、泣いてるの?」


ログチーが首をかしげる。


紫音は慌てて顔を逸らす。


「……な、泣いてねーし」


手の甲で目元を拭う。


「……湯気だよ、湯気」


一口、もう一口と口に頬張る。


「……美味いな……」


「……すげぇ、美味いよ」


「……そうか」


クロノスが短く返事する。


その顔は、なんとなくだけど、少し嬉しそうに

見えた。


「……ごちそうさまでした!!」


テーブルにあった料理を全て平らげ、手を合わす。


「……ハァ〜もう食えねぇ……」


「腹、パンパンだ……」


「どこにそんな量が入るんだか?」


ログチーが呆れたように言う。


「……うっせぇ!食える時に食うのが男ってもんなんだよ!」


「何なの?その理屈ー」


ログチーがやれやれといった様子で呟く。


「……あれ?」


ふと気づくと、カウンターにいた

クロノスがいなくなっていた。


「……ログチー、クロノスはどこ……」


言い終わる前に、ログチーが後ろを指す。


「……シルバー、う、後ろ?」


「……後ろ?」


言われるがまま、振り向くと、

クロノスが立っていた⸻


「……っ!?」


「な、なんだよ、急に!」


思わず声がうわずる。


「びっくりするじゃん……」


視線をそっとクロノスに向ける。


「……お前……」


「……全部、食ったな?」


「……俺の分も……」


「……は?」


一瞬の沈黙。


クロノスは、俺を睨みながら

ほんのわずかに頬を膨らませていた。


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