力の異変
じいちゃんは、
何事もなかったかのように、尋ねてくる。
「……どうしたんじゃ?それは」
何気ない声だけど、
ほんのわずかに、間があった。
「昨日、拾ったんだけどさ」
紫音は、手元のカードに視線を落とす。
夕暮れの光が、黒い表面に鈍く映る。
じいちゃんは、視線を少しこちらに向け
「……そうか」
と言って、視線を外す。
まるで、興味を持つこと自体を避けているように見えた。
「ほんとに、知らないのか?」
少しだけ踏み込む。
自分でもわかるくらい、口調が強くなっていた。
じいちゃんは、小さく息を吐いた。
「……さあな」
短い返事。
夕暮れの風が、二人の間を静かに抜けていく。
「……すまん」
じいちゃんが、ぽつりと呟く。
「また、身体が少しつらくなってきた」
「あ、ああ……」
じいちゃんは、ゆっくりと立ち上がる。
足取りはいつも通りのはずなのに、どこかだけ重く見えた。
そのまま、部屋へと戻っていく。
紫音は、無言のままその背中を見送った。
ふと気づくと無意識にカードを握りしめていた。
外の空気は冷たいはずなのに、
さっきより、熱を感じた気がした。
——
自室。
ドアを閉めると、
無意識に、ため息が漏れる。
カバンをベッドに放り、制服を脱ぐ。
「……」
じいちゃんの顔が、頭に浮かぶ。
あの一瞬の間。
視線の外し方。
(……変だったな)
胸の奥に、引っかかるものが残る。
白シャツのボタンに手をかけようとした時、
左腕が、ぴくりと震えた。
(シルバー……もういい?)
うずうずとした、抑えきれない声。
「ごめん……お前のこと、すっかり忘れてた」
頭をかきながら答える。
(ええ!?ひどくない!?)
「静かすぎんだよ」
(だってさっきめっちゃ我慢してたんだよ!?)
「へいへい」
適当に流しながら、シャツを脱ぐ。
(ていうかさ!さっきのじいちゃん)
声が少し弾む。
(何者なの?)
「……?」
スウェットに伸ばした手が止まる。
「何者も何も……俺のじいちゃんだけど?」
(なんか只者じゃない感じがしたよ)
「……まぁ、胡散臭いのは確かだけど……ただのじいちゃんだ」
スウェットに着替えながら、短く返す。
制服をハンガーにかける。
「つーか、お前」
腕時計を軽く叩く。
「何かわかるのか?」
(……ん〜わかんない〜)
…………
呆れて、言葉が出ない。
(でもね、ほんと只者じゃない!
自慢の鼻がピクピクしてるもん)
「お前の鼻が詰まってるんじゃないのか?」
(ひどっ!オレの嗅覚はすごいんだぞ!)
ログチーが抗議する。
紫音は、ポケットに手を入れる。
黒いカード。
指先に触れた瞬間、わずかに熱が伝わる。
取り出して、じっと見つめる。
「一体、何なんだよ……」
見つめていても、ただのカードにしか見えない。
けれど、視線を逸らせない。
表面が、わずかに揺れた。
「……っ?」
目を凝らす。
銀色の線が、じわりと浮かび上がる。
チェーンの模様が、ゆっくりと光を帯びていく。
「なんだよ……これ」
(……シルバー)
声が、少し低くなる。
(それ……あんまり——)
言い終わる前に。
視界が、ぶれる。
「……っ!」
頭の奥に、何かが流れ込んでくる。
断片的な映像。
音。
誰かの気配。
——屋上。
冷たい風。
誰かの息遣い。
「……は……?」
呼吸が乱れる。
カードを握る手に、力が入る。
「……なんだよ、今の……」
うまく言葉にならない。
(……やっぱり、それ……)
ログチーの声が、小さくなる。
カチッ
時計の音が、やけに大きく響いた。
「……?」
視界が歪む。
床の感覚が遠のく。
身体が、軽くなる。
白いジャケット。
黒いインナー。
銀のチェーン。
「……またかよ」
額に汗を浮かべ、乱れた呼吸を整えながら呟く。
振り返ると、
小さなログチーが、震えながら立っていた。
「……シルバー」
さっきよりも、少しだけ真剣な顔。
「……なんか変だよ。力……バグってる」
カードが、わずかに光る。
文字がうっすらと浮かび上がる。
11月8日 セントラルビル 21:00
そこに行け、と言わんばかりに——
カードには、まるで最初から書いてあったかのように、黒いカードの表面に文字が刻まれていた。
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◾️おまけ(遊び心を添えて…)
ネクストシルバーズヒィィンット!
『金欠』
紫音「全然関係ないだろ!」
お財布ピンチでもがんばれシルバー!
オレは応援してるよー!
紫音「お前はまず黙れ」
次回も見てねー!
※内容は本編には関係ありません。




