表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/20

記憶のない約束

昼休み。

教室の一角。


いつものメンバーで机を寄せ合う。

全員の弁当箱を取り出す音が、重なった。


大地が、我先にとフタを開ける。


「やっと昼飯だー!」


「朝練やってたし、腹減ってたんだよなー」


言いながら、もう箸を動かしている。


向かいの佐藤が呆れたように言う。


「お前、がっつきすぎー。弁当箱デカいし……」


横から山田が笑う。


「その体のどこに入ってんだよ!」


「運動部なめんなって!」


気づけば、弁当はもう半分以上なくなっている。


紫音は、そのやり取りを横目に見ながら、

静かに弁当箱を開けた。


その時——

左腕が、わずかに震えた。


「……ん?」


視線を時計に向けると


(……シルバー、おはよー)


間の抜けた声。


「……っ!」


反射的に、左腕を押さえて立ち上がる。

椅子がガタンと鳴った。


箸を止めた大地が顔を上げる。


「なに?どうした?」


佐藤と山田も、つられてこちらを見る。


「えーっと……虫がいたみたいでさ」


笑ってごまかす。


「虫?こんな時期に?」


「……いや、糸くずだった……」


山田がニヤつく。


「お前意外にビビリだなー」


軽く笑いが起きる。


紫音はそれに合わせて苦笑いしながら、

押さえたままの左腕に小さく呟く。


(いきなり喋んなよ……)


「大丈夫だよー!キミにしか聞こえないんだから」

自慢げに、ログチーが喋る。


(わかったから、今は喋んな……)


「え?今なんか言った?」


「いや、なんでもねぇ」


目線を逸らして返す。


大地が、何事もなかったかのように話を戻す。


「でさー。お前ら、明日どうする?」


口を動かしながら言う。


「カウントワン行くだろ?」


「……は?」


紫音の手が、止まる。


「話してたじゃん。週末に行こうってさ」


佐藤と山田も頷く。


(覚えてない記憶……)


「まぁな……」


とりあえず、合わせる。


大地が当然のように言う。


「行くよな?」


「……まぁ、いいけど」

半分勢いに押されるように返す。

(今、それどころじゃねぇんだけどな……)

心の中で、ため息をつく。


「よっしゃ!」

大地が満足そうに笑う。


山田が続いて


「せっかくだし、女子も誘う?」


佐藤もノリよく続く。


「人数いた方が楽しいじゃん」


「……別に俺はどっちでも……」


興味なさそうに返す。


大地が少し身を乗り出し、耳元でボソッと呟く。


「白石……誘ったら来てくれるかな?」


「……さあな」


佐藤が二人を見ながら言う。


「え?何なに?俺らには内緒かー?」


山田が笑う。


「クラスの女子とか誘ってみるか?」


大地が調子に乗って言う。


「じゃあ、紫音、ちゃちゃっと声かけてこいよー」


「なんで俺だよ」


呆れながら返す。


三人が、期待の眼差しで紫音を見る。


「……絶対嫌だ」


「えー……」

三人が露骨に肩を落とす。


紫音は気にした様子もなく、弁当を口に運ぶ。


結局、四人で行くことになった。


——


放課後。


「今日も先帰るわ!」

大地らに、声をかける。


明日の約束をフッと思い出す。

「明日、10時に現地集合な!」


大地達のOKのサインを見ながら

足早に学校を後にした。


自宅。

玄関で靴を脱ぎ、着替えるより先に縁側へ向かう。


廊下に出ると、冷たい空気がすっと流れ込む。


「……」


いた。


縁側に座る、じいちゃんの背中。

少し丸まったその背中は、どこか静かだった。


「じいちゃん、ここにいたんだ」


じいちゃんが、ゆっくり振り向く。


「ああ……おかえり、紫音」


いつもと変わらない声。


でも——

どこか、少しだけ違う気がした。


「調子悪いんじゃなかったのか?」


じいちゃんは軽く肩をすくめる。


「んー……まぁな」


小さく息を吐く。


「年寄りはな、ちょっとしたことでガタがくるんじゃ」


紫音は何も言わず、隣に座る。

冷えた板の感触が、じんわりと伝わってくる。


「あまり無理すんなよ」


ぶっきらぼうに言う。


じいちゃんが、小さく微笑む。


「お前は……優しい子じゃな……」


「別に……」


少し照れくさくなり、紫音は視線を逸らす。

風が、ゆっくりと通り抜ける。


「……なぁ、じいちゃん」

ポツリと紫音が呟く。


ポケットに手を入れ

指先に触れたそれを、そのまま取り出す。


黒いカード。

縁に銀のチェーンの装飾。


紫音は、それを指で挟んだまま、

じいちゃんの方へ軽く向けた。


「……これ」


じいちゃんの目を見る。


「見覚えない?」


じいちゃんの動きが——

ほんのわずかに、止まった。


夕暮れの中、カラスの声だけがあたりに響いていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


「続き気になる!」と思ってもらえたら、ぜひ応援お願いします!

ブックマークやリアクション、評価(★★★★★)を

してもらえたら、嬉しいです。

一言でも感想を気軽に書いてもらえたら励みになります✨


■おまけ

次回予告——ナレーション、ログチー


差し出された黒いカード

崩れゆく、穏やかな老人の仮面。

語られるのは真実か、それとも新たな偽りか。


次回、『シルバー、犬に噛まれる」


紫音:……じいちゃんとのシリアスな空気返せよ!!

※内容は本編とは関係ありません。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ