↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮
能力のバグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/89

記憶のない約束

 授業中もSNSの映像が頭をよぎって、全然内容が入ってこない。まあいつものことと言われればそうなんだけど。

「はぁ……」

 ため息をつきながら、黒板の文字をノートに書いていく。

「これは次の試験に出るからしっかり覚えておけ!」

 先生が力を込めて説明をしている。とりあえず教科書に丸だけつけておいた。


「ふわぁ……ねむっ」

 ペンを置き、そのまま深い眠りに落ちた。


昼休み——

 教室の一角。

 いつものメンバーで机を寄せ合う。全員の弁当箱を取り出す音が重なった。


 大地が、我先にとフタを開ける。

「やっと昼飯だー!」

「朝練やってたし、腹減ってたんだよなー」

 そう言いながらもう箸を動かしている。


 向かいのノブが呆れたように言う。

「お前、がっつきすぎー。弁当箱デカいし」

 横からナオが笑う。

「その体のどこに入ってんだよ!」

「運動部なめんなって!」

 気づけば、弁当はもう半分以上なくなっている。

 俺はそのやり取りを横目に見ながら、静かに弁当箱を開けた。


 その時——

 左腕が、わずかに震えた。


「……ん?」

 視線を時計に向けると

(……シルバー、おはよー)

 間の抜けた声。

「……っ!」

 反射的に、左腕を押さえる。


 箸を止めた大地が顔を上げる。

「どうした? 紫音」

「いや、何も?」


 咄嗟に誤魔化し、押さえたままの左腕に小さく囁く。

「いきなり喋んなって言ったろ?」

「大丈夫だよー! シルバーにしか聞こえないはずだしさ」

 自慢げにログチーが喋る。

「わかったから今は喋んなって」


「今なんか言ったか? 紫音」

 大地が尋ねてくる。

「なんも言ってねぇよ? 空耳じゃね?」

 目線を逸らしながら言葉を返した。

「ならいいけどさ、それよりお前らさ」

 俺とナオとノブが一斉に大地を見る。


「明日は何時に待ち合わせする?」

「待ち合わせ? なんか約束したっけ?」

「ラウンドワンに行くって話だろ?」

 ノブが説明する。


「あ、ああ、あれな」

(抜け落ちた記憶の中の約束か……)

 動かしていた箸が止まる。


「話してただろ? 週末に行こうってさ」

 ノブとナオも頷く。


「わりぃ、そうだったよな、ははっ」

 とりあえず、合わせる。


 大地が当然のように聞いてくる。

「もちろん行くよな?」

「……まぁ、いいけど」

 半分勢いに押されるように返す。


「よっしゃ!」

 大地が満足そうに笑う。


 ナオが続いて、

「せっかくだし、女子も誘う?」

 ノブもノリよく続く。

「だな! 人数いた方が楽しいし」

「別に俺はどっちでも……」

(女子なんかどうでもいい)


 大地が少し身を乗り出し、俺の耳元でボソッと呟く。

「白石……誘ったら来てくれるかな?」

「誘ってみればいいんじゃね?」

「簡単に言うなよ」


 ノブがこっちを見ながら揶揄ってくる。

「え? 何なに? 俺らには内緒かー?」

 ナオが笑う。


「ク、クラスの女子とか誘ってみたりするとかいいんじゃないか?」

 大地がここぞとばかりに便乗する。


「じゃあ、紫音! ちゃちゃっと声かけてこいよー」

 ノブが笑いながら言ってくる。


「なんで俺なんだよ」

 三人が、期待の眼差しで俺を見る。


「絶対嫌だからな!」

「えーー? けちーー!」

 三人が露骨に肩を落とす。


 俺は三人を無視し弁当を黙々と食べる。

 結局、俺ら四人で行くことになった。 


放課後——

「今日も先帰るわ!」

 大地らに声をかける。


「明日、十時に現地集合な!」

 大地が嬉しそうに言う。

「へいへい」

 大地にOKサインを出し、足早に学校を後にした。


自宅——

 玄関で靴を脱ぎ、着替えるより先に縁側へ向かう。廊下に出ると冷たい空気がすっと流れ込んでくる。


「あっ、いた!」

 縁側に座るじいちゃんの姿。少し丸まったその背中はどこか静かだった。


「じいちゃん、起きてて大丈夫なのか?」

 じいちゃんが、ゆっくりこちらを向く。

「ああ……おかえり、紫音」

 いつもと変わらない声。

 でもどこか、少しだけいつもと違う気がした。


「ここ寒いし、部屋で休んでなきゃダメだろ」

 じいちゃんは軽く肩をすくめる。

「んー、そうじゃのう」

 小さく息を吐く。

「病院にも行かねぇって母さんも心配してたぞ? 悪化してからじゃ遅いんだからさ……」


 じいちゃんの隣に座る。冷えた板の感触が、じんわりと伝わってくる。


 じいちゃんが優しく微笑む。

「年寄りはな、ちょっとしたことでガタがくるもんなんじゃよ。いちいち病院に行くほどでもなかろうて」

「待つのが嫌いなだけだろ? ったく」

「ははっ! バレたか」

 じいちゃんがいつものように笑う。その顔を見て少しホッとする。


「でもさ、じいちゃんほんとに無理すんなよ」

 じいちゃんが、小さく微笑む。

「お前は……優しい子じゃな」

「別に」

 少し照れくさくなり、視線を逸らす。風が、ゆっくりと通り抜ける。


「……なぁ、じいちゃん」


 ポケットに手を入れ、指先に触れた《《それ》》をそのまま取り出す。


 黒いカード。縁に銀のチェーンの装飾。

 俺は、それを指で挟んだまま、じいちゃんの方へ軽く向けた。


「……これ」

 じいちゃんの目を見る。

「見覚えない?」


 じいちゃんの動きがほんのわずかに止まる。


 夕暮れの中、カラスの声だけがあたりに響いていた。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


「続き気になる!」と思ってもらえたら、ぜひブックマークや応援の程、よろしくお願いします。


■おまけのページ(遊び心を添えて…)

次回予告——


差し出された黒いカード。

崩れゆく、穏やかな老人の仮面。

語られるのは真実か、それとも新たな偽りか。


次回、『シルバー、犬に噛まれる』


紫音「じいちゃんとのシリアスを返せ!!」


ログチー「次もよろしくねー!」


紫音「無視かよ!」


※内容は本編とは関係ありません。


◇動画配信も始めました。

⭐︎YouTube⭐︎

https://youtube.com/@ren_kurose0404

⭐︎TikTok⭐︎

https://tiktok.com/@ren_kurose0404


良かったら覗いてみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。