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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮


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12/20

予期しなかった拡散

朝。


冬の日差しが、カーテンの隙間から細く差し込む。

白い光が、部屋の空気をゆっくりと照らしていた。


布団の中から手を伸ばし、スマホを掴む。


「……7時20分……?」


一瞬の沈黙。


「……やべっ!」


上布団を押し退け、慌てて飛び起きる。


その直後、ノックの音。


「紫音ー!起きてるー?」

母の声が、ドア越しに響く。


慌てて、ドアが開くのを即座に抑える。


「着替えてるから、開けんなよ!」


思わず強い口調になる。


「はいはい、また思春期ー?」

呆れたような声。


「着替え見られて困るとか、何してんのよもう」


「うるせぇって!」


言い返しながら、鏡の前に立つ。


映っているのは——

いつもの自分。


黒髪。黒のスウェット。

寝起きのままの、見慣れた顔。


「……戻ってるな」


小さく息を吐く。


胸の奥にあったわずかな緊張が、少しだけほどけた。


左腕を見る。


腕時計。


——ログチー。


静かなまま。


軽く指で叩く。


反応はない。


「……まだ寝てんのか」


ぼそっと呟く。


そのまま、ベッドに腰を下ろす。


ぼんやりと天井を見上げる。


白い天井。

変わらない、いつもの景色。


昨夜のことが、頭をよぎる。


アルカ。

クロノス。

黒いカード。


現実だったのかすら、曖昧なまま。


(……わけわかんねー)


小さく息を吐く。


「紫音ー!いい加減にしないと遅れるわよー!」


母の声で、思考が途切れる。


「わかってるって!」


制服に着替え、階段を降りた。


——


ダイニング。


食卓を見渡すと、またじいちゃんがいない。


「母さん、じいちゃんまた寝てるのか?」


「そうなのよー、なんか調子悪いみたい」


眉を下げながら、心配そうに呟く。


「病院行きましょって言ったんだけどね」


「紫音も、おじいちゃん気にしてあげてね」


「わかった……あ、やべっ時間」


慌てて靴を履く。

外に出てから、ふと縁側を見る。


——いない。


いつもなら、そこにいるはずの姿。

冬の冷たい空気だけが、静かに流れている。

ほんの一瞬、胸の奥がチクッとした。


「……行ってきます」


小さく呟き、家を出た。


——


教室。


「ねー見た!?」「マジでやばくない?」


朝からざわついている。


教室の空気が、いつもより少し浮き足立っていた。


「……なんだよ」


席に着きながら、大地に声をかける。


「なんかあったのか?」


「あー、それな」


スマホを取り出す。


「なんかSNSでさ、急に拡散されてるやつあるんだけど」


「へー」


興味なさそうに頷く。


「動画撮ろうとしたやついたらしいけど、全然無理だったらしくてさ」


「早すぎてブレブレ」


「で、辛うじて撮れたのがこれ」


画面を向けられる。


「……」


映っていたのは——


白いジャケット。

黒いインナー。

銀のチェーン。


黒い仮面。

——シルバー。


「……っ」


思わず手に持っていた教科書を落とす。

乾いた音が、床に響く。


「ん?紫音、まだ寝ぼけてんのか?」


「あ、ああ……寝不足かもな」


軽く笑って、ごまかす。

鼓動が、少しだけ早くなる。


大地が続ける。


「なんか“これが怪盗アルジェントか?”とか言われてるらしいぜ」


「は?」


「いや、コスプレかなんかじゃね?って話もあるけど」


「イケメンが街突っ切ってる、みたいな」


「……」


言葉が出ない。


(アルジェント……)


どこか、引っかかる。


でも、思い出せない。


「なぁ」


大地が、ふと真顔になる。


「まさか、お前じゃないよな?」


「……は?」


少しだけ、眉をひそめる。


「いやだって、お前さ——」


「昨日の昼からいなかったし」


ニヤニヤしながら、冗談混じりに言う。


視線を逸らしながら、答える。


「……あるわけねぇだろ」


短く、返す。


「だよなー?紫音が?ないない、ないわー」


「……もし、俺だったらどうする?」


大地をじっと見つめて言う。


大地が吹き出す。


「絶対ありえねぇって。お前が?コスプレ?」


紫音は横目で見て、


「……まぁ、だよな」


小さく返す。


——でも。


頭の中には、今見た映像が残っている。

路地裏へ走り込む“自分”。

(撮られてたのかよ……)


無意識に、左腕を見る。


時計。

静かなまま。

何も答えない。


(……夜に確認するか)


胸の奥に、

はっきりしないままの、不快な感覚。

それは、消えることなく、そこにあった。


——


某時刻——アルカ店内。


薄暗い店内に、静かな空気が流れている。


クロノスが、男に黒いカードを手渡す。


「すまん、油断した」


「いや、いい」 


男はカードを受け取り、軽く指でなぞる。

その手つきは、どこか慣れていた。


「またくる」


「ああ……またな、アルジェント」


男は、わずかに口元を緩める。


その瞳は——

どこか、先程までここにいた少年と、よく似ていた。

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