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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮


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謎の店、アルカ

建物の前に立つ。


扉に手をかける。

わずかに軋む音が、やけに大きく響いた。


ゆっくりと開く。


中は薄暗い。

空気が、重い。

ひんやりとした冷たさが、肌にまとわりついてくる。


静かだ。

自分の足音と、呼吸だけが、やけに響く。


「シルバー……なんだか怖いよ」


ログチーは、腕にしがみついたまま離れない。


紫音は警戒しながら、ゆっくりと周囲を見渡す。


「……なんだよ、ここ」


ふと、視線が上に向く。


看板のようなもの。

見たことのない文字。


読めない——はずなのに。


「……アルカ……?」


自然と、口にしていた。


「え、え!?ちょっと待って!?」


ログチーの声が、少し震える。


「シルバー、それ……!」


言葉に詰まる。

明らかに焦っていた。


「ヤバいよここ!引き返して!」


「は?なんだよそれ」


「なんだよじゃないって!ここは——」


途中で、ぴたりと止まる。


「……出れる保証、ないかも」


「……は?」


その時だった。


人の気配。

いつの間にか、目の前に“立っていた”。


「うわああああ!!」


ログチーが勢いよく顔に飛びつく。


「ちょっ……おい!」


視界が塞がれる。


「ムリムリムリムリ!!」


「離れろっての!」


「やだ!!前見て!!前!!」


「見えねぇんだよ!!」


無理やり引き剥がす。


視界が開く。


長身の男。

感情の見えない瞳。


「……ようこそ」


低い声が、静かに落ちる。


紫音は、わずかに眉をひそめる。

その奥で、背筋が冷たくなるのを感じていた。


「……どこだよ、ここ」


男は答えない。

ただ、わずかに視線を落とす。


「アルカ」


短く、それだけ告げた。


「俺の店だ」


「アンタの店……?」


少し後ずさりながら、周囲を見渡す。


気づけば、さっきよりも明かりが灯っていた。


でも——

その光は、どこか不自然だった。


影が、わずかに遅れて動くような不気味さ。


店内には、誰もいない。

商品なのか、用途のわからないものが、

静かに並んでいる。


「……てか、アンタは?」


「クロノス……好きに見ていけばいい」


そう言って、男はカウンターに腰を下ろした。


「好きに見ろって言われても……」


視線を巡らせる。


——その時、


見覚えのあるものが、目に入る。


黒いカード。


「……っ!?」


反射的に、ポケットから取り出す。


「同じカード……?」


確かめるように、棚のカードへ手を伸ばす。


触れた瞬間、

銀のチェーンのような模様が、浮かび上がった。


「……っ!?」


背後に、気配がして、即座に振り返る。


クロノスが、すぐ後ろに立っていた。


何かを言いかけた時


「うわあああああ!!」


ログチーが再び顔に飛びつく。


「……いい加減にしろっての」


再度、引き剥がし、胸ポケットへ突っ込む。

ログチーは黙って震えている。


紫音は、軽くポケットを押さえながら言った。


「今、何て言ったんだ?」


クロノスは答えない。


ただ、紫音の手にある二枚のカードを見つめる。


そして、口を開いた。


「店にあったそのカードは——もうお前のものだ」


「は?」


眉をひそめる。


「いやいや、買わねーし……てか金欠だし」


「うちの商品は持ち主を選ぶ。金はいらない」


「その代わり——」


「ヤダヤダヤダヤダー!命とか無理無理ー!」


ポケットの中で、ログチーが叫ぶ。


紫音は、小さくため息をつきながら、

ログチーを撫でた。


クロノスが、静かに笑う。


「命ではない」


その視線が、落ちる。


紫音の右手。

握られている黒いカード。

縁に、銀の装飾。


「……っ!?」


クロノスが、一歩近づく。


「……At」


低く、呟く。


ログチーが息を呑みながら、そっと胸ポケットから顔を出す。


クロノスは、ゆっくりと紫音を見た。


「面白いものを持っている」


「……なんだよ、それ」


「価値のあるものだ」


短く、断言する。


「それと交換しよう」


「……は?」


クロノスが、わずかに影を落とす。


「対価としては、十分だ」


紫音が何か言おうとした、その瞬間——


右手のカードが、消えていた。

気づけば、クロノスの手の中にある。


(いつの間に……?)


「このカードは一体何なんだ?」


「……いずれ、わかる」


わずかな間。


「さあ、交換だ」


意識が、ゆっくりと遠のいていく。


誰もいなかったはずの店内に

別の気配が、入ってきた気がした。


振り返るより早く、視界が落ちた。


「……はっ」


目を覚ました時

そこは、自室の天井だった。


静かな部屋。


現実に戻ったはずなのに——

どこか、感覚がズレている。


左手。

黒いカードが、握られている。


拾ったものとは違う、見覚えのない装飾。


「……」


無言のまま、視線を落とす。


白いジャケット。

黒いインナー。

銀のチェーン。


——まだ、戻っていない。


(……ログチー?)


胸ポケットを見ると、小さく息をしながら

眠っている。


紫音は、視線を落としたままボソッと呟く。


「無事で良かった……」


安堵したまま、意識がゆっくりと落ちていった。

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