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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮


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意図しない変身

教室を出た。

廊下には、まだ昼休みの賑やかな声が響いている。


(……まずいな……)


この時間に外へ出るのは、さすがに目立つかもしれない。


階段を下りる。

昇降口を抜け、校門を出る。


通学路を少し逸れたところで、

「ちょっと君……」

声をかけられた。


「……っ」

振り返ると、そこには知らない男が、不審そうに

こちらを見ていた。


「学校は?」


「……」

一瞬だけ、言葉に詰まる。


「今、授業中じゃないのか?」

視線が、まっすぐ向けられる。


(このオッサン、警察か……?やべぇな)


「……すみません」

それだけ言って、踵を返した。


「ちょ、待ちなさい!」

声が飛ぶ。


走り出す。

(クソッ……!)

心臓が早くなる。

視界が揺れる。


曲がり角を曲がる。

そのまま、全力で走る。


「……はぁ……っ」

息が上がる。


「……ログチー!」

走りながら、腕時計に向かって小声で叫ぶ。


「おい、起きろ!」

返事はない。


「おいって……!」

その時。


「……んー……?」

間の抜けた声。

「おはよー……シルバー……」


「今それどころじゃねぇんだよ!」

苛立ちが混ざる。


「状況見ろ、追われてんだよ!」


「えー……?」

寝ぼけたままの声。


その瞬間——

視界が、揺れた。


「……っ?」

身体の感覚が、変わる。


白いジャケット。

翻るマント。

腰元で、銀のチェーンが揺れる。


「は……?」


足が止まりかける。

「ちょっ……待て!」


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周囲の視線が、一気に集まる。

「え、なにあれ?」


「コスプレ?」


「動画撮ろ」


ざわめき。


スマホを向けられる。


「……っ!」


反射的にマントで顔を隠し、そのまま走り抜ける。

(最悪だ……!)


そのまま、人の間をすり抜けるように

視線を振り切り、路地裏に飛び込む。


壁にもたれ、荒く息を吐く。


「……はぁ……っ」

静かになる。

外のざわめきが、遠くに聞こえる。


「お前……!」

腕にしがみついたまま、ウトウトしているログチーに話しかける。


「なんで勝手に発動してんだよ!」


「え?え?」

ログチーが、ようやく状況を理解し始める。


「ちょ、ちょっと待って!これオレじゃないって!」


「はぁ!?」


「ほんとだって!なんか勝手に——」


「いいから戻せ!」


食い気味に言う。


「今すぐだ!」


「え、えっと……リバート?」


「それだ!」

紫音は、息を整える。


小さく呟く。

「……Revert」


——何も起きない。


「……は?」


もう一度。


「……Revert」


変化はない。


「……なんでだよ」

苛立ちが募る。


そのとき——


ポケットの中に、違和感。


「……っ」


黒いカード。

指先に触れる。


「……そうだ」

思い出す。


昨日。

あの感覚。


「……戻れるかもしれねぇ」

小さく呟く。


「え?」


ログチーが反応する。


「カードを拾ったときに戻れば——」


「ちょっと待って、それ……」

ログチーの声が変わる。


「やめたほうがいい!嫌な予感がする」


「は?」


「今の状態でやるの、ちょっと危ない——」


「いいから、やる!」

即答する。


「ちょっ!シルバー!?」


目を閉じる。

意識を集中させる。


時間。

ズレ。

あの感覚を、なぞる。


ポツ……

頬に、冷たい感触。


「……?」


目を開ける。

雨。

ぽつぽつと、落ちてくる。


「なんだよ……急に」

空を見上げる。


その瞬間——


ザーッと、強くなる。

一気に視界が歪む。


「……っ!?」


身体が、引っ張られる。


「ほらー!嫌な予感が的中じゃないかー!やばいよ、シルバー!」

ログチーの声。


足元が、揺れる。

時間の感覚が、崩れる。


前に進んでいるのか、

戻っているのか——

わからない。


「……っ!」


視界が白くなる。


次の瞬間。

静寂。

雨音が、消えていた。


「……は……?」

ゆっくりと目を開ける。


そこは——

見たことのない場所だった。


薄暗い空間。

古びた扉。

目の前に、一軒の店。


「……なんだよ、ここ」

小さく呟く。


背後を振り返る。

さっきまでいた路地裏は、どこにもなかった。


「……は?」


ログチーが、小さく震えながら


「……シルバー」


その声は、さっきまでと違っていた。


「ここ……」


わずかに間。


「来ちゃダメなとこかも」


扉の向こうから、気配がする。


静かに——

誰かが、こちらを見ているような。


紫音は、無意識に一歩踏み出していた。

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