⑧ー1
一行は広いお座敷で囲むように座ると、女将達が一人ずつ配膳した。
うわ、みんなもう浴衣に着替えてるのか。僕だけ浮いてるかな? 気にしないようにしよう。さっきのあのシチュエーションで僕だけ着替えるのって、恥ずかしいじゃん。
社長が挨拶をして、宴会が始まった。今日は久々によく歩いたなあ。
「北村さん、どうでした?」
「ん? 七福神巡り? 全部は回ってないけど、よかったよ」
瀬名さんが早速やって来た。
「写真とか、撮りました?」
「うん。一応」
「見せてください」
「別にいいけど」
僕は携帯電話を瀬名さんに渡した。
「どこですか?」
「この、画像フォルダの中」
もしかして瀬名さんも興味があったの? そうなら一緒に行ってもよかったのに。
「俺、遺跡とか、こういうのも好きなんですよ」
「そうなんれふか」
僕は食べながら、もごもごと答えた。
インドにもいろいろありそうだよね。ガネーシャも好きそうだったし。
「おい、瀬名君よ」
遠くから岩谷さんが手招きして呼んでる。
「すいません。後でまた見せてください」
「うん」
さあ、料理を味わうか。お刺身の盛り合わせ、美味しいな。
山崎さんはみんなにビールを注がれて、いつもよりペースが速そうだ。無理しなくていいのに。
「お疲れ様です」
おや。沢田さんがビール瓶を持ってきた。
「お疲れっす」
僕にビールを注いでくれた。
「あの、北村さんて、結婚しないんですか?」
げ。いきなり、その質問? 新年早々、親に言われたことを思い出したよ。
「結婚はまだしないですねえ」
というか、誰とも付き合ってないんだし。できるわけないよねー。愛想笑いになっちゃったよ。
あ。沢田さんに、年賀状のことを聞こうと思ってたけど、もう戻って行っちゃったな。もうちょっとゆっくり話したかったな。でも、僕は腰も重いし、動くのは無理。
僕が蟹を食べていたら再び瀬名さんが来て、僕の携帯電話でさっきの続きの画像を見てる。
「瀬名さん、蟹がでてきましたよ」
「俺、蟹は嫌いなんですよ。面倒臭くて」
「あらら」
まあ、わかるけど。でも、美味いのになあ。夢中になって食べちゃうよ。
「おい、北村。コンパニオンと仲良くできたか?」
「北村さん、シャイですもんね」
岩谷さんと白川さんの二人がやって来た。どうしたんだ、みんなして集まって。岩谷さんも、かなり陽気になってるな。というか、コンパニオンとは別に話したくもないし。
「北村さん、この動画見ていいですか?」
瀬名さんが聞いてきた。
「動画?」
あ、ちょっと待ってよ。勝手に別のファイル、しかも、見つからないように隠してたやばいやつを見つけたの?
「ちょっと待って」
「動画って何?」
白川さんが画面を覗き込んだ。周りの騒音に紛れながらも、携帯電話から卑猥な音声が聞こえてくる。
がーん。瀬名さん、再生しちゃったよ。
「キャー」
僕の横で白川さんが恥ずかしそうに声をあげた。げえっ。見られちゃった。しかも、白川さんにまで……。




