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   ⑤ー1

 仕事が繁忙期になると、みんな残業が増えたり、休日出勤したりする人もでてくるんだ。僕は今の仕事の分量でマックスだから、これ以上仕事が増えるときついっす。

「ねえ、北ちゃんよ。上の人と話したんだけどさ、私の仕事、ひとつやってくれんけ?」

「えー?」

「最近、私、毎日残業ながやぜ」

「そんなこと言われてもなー」

 山崎さんも、無茶を言うなあ。僕も結構テンパッてるのに。

「ね。お願いしたからね。無理そうだったら南さんに相談して」

「わかりましたよ」

 はあ。これ以上仕事が増えたらきついな。これで残業が増えるのも確定だし。僕は上の人から見たら、さぼってると思われてるのかな? まあ、さぼってる時もあるんだけどさ。


 なんか、あんなことを言われたら、急にやる気が無くなっちゃったよ。こんな時はパソコンで仕事をしてる振りをしながら、内職しよう。

 内職っていうのは、今やってるゲームのモンスターの交配データを表にしてるんだよね。インターネットをしてる時もあるけど。自分の仕事は自分のペースでやるから、いいでしょ。

 だから、別にさぼってるのが見つかっても僕は気にしてない。ね、不良社員でしょ。


 昼休み、みんなとする話題は多岐にわたるけど、僕は家電製品が好きだから、デジカメの新製品とかがでると、つい話しちゃう。基本的に僕は話好きなんだよね。

 みんなは話を聞いてくれてるけど、瀬名さんは何を考えているかよくわかんない時がある。たまに、冗談で返してくる。

 坂下さんは、本を読みながら聞いてることが多いね。また資格試験を受けるらしい。

 沢田さんは、いつも僕の方を見て話を聞いてくれる。僕が冗談を言うと、あははと笑ってくれる。なんか、話しやすいんだよね。相性ってあるのかな。


 繁忙期が過ぎて、少しは仕事の量も減ってきたね。今年も何とか乗り切れそう。

「おい、北村。お前、旅行には行くよな?」

「旅行?」

「来年の慰安旅行やぜ」

「ああ、パンフレットが回覧されてましたね」

「おうよ」

 岩谷部長が仕事部屋に入ってきて旅行の話をし始めた。

「温泉と蟹と、コンパニオンだぞ、と言っても、お前にはコンパニオンは嬉しくないか」

「どうしてですか」

「お姉ちゃん達と楽しく喋りそうもないよな」

「それはわかりませんよ」

「ほんとか? なら楽しみにしとくわ。あ、それと、温泉の近くで観光できそうな所、お前、知らんか?」

「観光ですか……。七福神巡りなら知ってますけど」

「何だ、それは?」

「神社とか公園に、七福神が祀られてるそうです」

「ほんとか。でも、楽しくはなさそうだな」

「興味のある人しか行かないでしょうね」

「お前はあるんか?」

「ええ」

「そうなんか?」

「金運がアップしたら、いいじゃないですか」

「それが目的か」

 そう。宝くじが当たるように、お祈りしてこようと思ってるんですよ。金は天下の回り物ってね。ん? 使い方あってるかな?

 あ、そうそう。僕がいつも身につけているウエストポーチには、常時十万円ほど入ってるんだよ。いつ必要になるか、わからないしね。電気屋さんに行った時、買いたい物があればすぐに買えるし。電気屋さんのポイントも十万円分くらい貯まってる。いくら使ったんだよって話だよねー。


 ある日、僕がインターネットをしていると、瀬名さんが、いつの間にか僕の健康診断結果表を封筒から取り出して見ていた。

「何で勝手に見てるんですか。個人情報がー」

 僕が笑いながら言っても、瀬名さんはじっと見てる。きゃー、やめてー。

「北村さん。太りすぎですよ」

「ほっといてちょ」

 僕も太ってきたのは自覚してるんだから。

 丁度、部屋に入ってきた沢田さんも、瀬名さんの後ろからそれを覗き込んだ。いやん、沢田さんにも見られちゃった。恥ずかしい。

 三桁の大台には乗ってないけど、このままいくと、ほんとに乗りそうだよな。わかってるんだけど、カウチポテト族なんだよ。

 え? どう言う意味かって? これって、もう死語なのかな。家の中でテレビとかを見ながらポテトチップスを食べる人のことね。僕の場合は、そこにコーラを飲みながら、が加わるけど。

 面白い海外ドラマにはまると、時間を忘れて一気に見てしまって。気がつくと朝になってたり。面白いんですよ、これが。


 沢田さんの僕の体を見る目が、ちょっと生々しくて恥ずかしい。

「要検査になっていますけど」

 げえっ。沢田さんにも言われたー。ショック。

「大丈夫ですよ」

と言うしかないよね。

「こんなにブヨブヨになって」

 瀬名さんが僕の腰を摘まんだ。

「やめてー」

 少しは規則正しい生活にしようとは思ってるんだから。今日は勘弁してよ。



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