↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承  作者: 群青 ひら
63/64

第18章 終章 継承―2②

玲央はほんの少し、キュッとなった。ここにはもう、桜花ママはいない。雨が降るとたまに寒くなる、吸い込まれそうな青い空の青森が僕の家だ。


……酸っぱい実をつけるリンゴの木や新しく作ってもらった自分の部屋がある家が急に恋しくなった。


「音環とうさん、帰ろ?」


かあさんも。と玲央は2人の背中を押した。




翔大ママのお墓参りの前日。音環はホテルのベッドに寝転がりながら天井を見ていた。……少しだけ緊張していた。


隣のベッドでは玲央と翔大が、寝息を立てて眠っていた。


「音環、何考えているの?」


門亜がやってきて、音環が寝転ぶベッドの足元に座った。


「うん……。一応、住職には事前に話をしてあるけど……向こうの家族と出くわさないといいなって」


49日も100日も越えた。月命日からは、ずれている。


翔大にゆっくり手を合わせる時間を与えたかった。そして、ちょくちょく来れないまでも、たまには訪れることが出来るように……配慮をもらえたら。


「ホントだね……。いつでも行けるってとても大事だよね。明日の話、うまくいくといいね……」


門亜はそう言うと、翔大の隣に行きゆっくりと頭をなでた。


――翌日。事前に連絡をして約束をした時間に音環たちは寺を訪ねた。音環たちの父親と同じ年くらいの住職は快く音環たちを迎えてくれた。


住職は、簡単に翔大の母親について教えてくれた。


祖父母が眠る一族のお墓に埋葬されたこと。自宅は墓所のある五所川原市から離れたところに住んでいるので、今までもそうだったように、お彼岸やお盆といった時にしかお墓参りに来ないだろう。とのことだった。


そして、翔大には静かにお参りをさせたいので、向こうの家には墓参をしていることを言わないでほしいと頼むと快く承諾してくれた。


話が済むと、住職は翔大ママの眠るお墓に案内してくれた。少し前に墓参があったのだろうか。花は供えられていなかったが、墓石がきれいになっていた。


翔大は花立に水を入れると、包みをはがし花を挿した。上手く行かず、玲央の手を借りた。それでも上手くいかず……そっと門亜が手を貸した。


翔大ママの……亡くなった日を思い出したのだろうか。一瞬、翔大の顔がくしゃっとなった。唇をかみしめて肩を震わせた。玲央は泣きそうになる翔大をぎゅっと抱きしめた。


そして、4人で手を合わせた。


また……来ような。音環は玲央と翔大の頭をなでた。




そして。


いつもの毎日が始まった。


夕方より前、門亜が玲央たちを学童に迎えに行くと、そのまま門亜の店に行く。琥太郎も学校が終わると、いったん家に寄った後、まっすぐ門亜の店に行く。


そして3人で夕食を食べると……琥太郎が宿題をする傍ら、玲央も翔大も家庭学習を始める。もっぱら、国語と算数のドリルを解いていた。


音環が迎えに来ると、3人は車に乗って音環の家に行く。


玲央と翔大がお風呂に入っている間、音環はご飯を食べ、琥太郎はゼリーを食べる。たまにおかずをもらって、口の中が凄いことになるが。


……琥太郎、いい加減学ぼう。


玲央たちがお風呂から出た後、音環は琥太郎にギターを教えていると、玲央たちもやってきて、ソファーの上でじゃれあってはいつのまにか寝てしまう。


大河が琥太郎とおかずのタッパーを迎えに行くのはこのころだ。最近では平日はすっかり、音環と門亜に頼っている。


そして……門亜が帰ってくるまで、音環がギターを弾きながら待っている……それで1日が終わる。


それが、いつもの毎日。




大河が迎えに来て、琥太郎が帰った後、珍しく防音室には音環1人になった。久しぶりに……あの曲に挑戦してみたいな。


音環は楽譜を取り出すと、ひとまず動画で指の動きを確認してみた。なるほどな……。


そして一つずつ音を確認するように弾き出した。


……We Are the World。


大きな輪の中で生きていく、俺たち。


たまたま手を伸ばすことが出来ただけだ……それによって救われたことを忘れてはならない……。


音が滑らかになってきた……音環がそう感じてきたころ、玄関の開く音がして門亜が帰ってきた。とん、とん、と階段を上る音がした。


「音環、ただいま。今日は……懐かしくない?」


門亜はそう言うと、カバンを足元に置いた。そして音環の隣に座ると思いっきり体重をかけた。頭で音環の腕をぐりぐり、とした。


なんだなんだ。大型犬かでっかい猫か。……仕方ないなぁ。音環はギターを傍らに置くと、門亜の頭を、背中を思いっきりなでた。


まあ、よく頑張ってるよな。門亜も。人とあまりしゃべらないでいいような仕事を選んでいたのに、今は接客をする仕事だもんな。子どもの行事にメインで出たり、ホント、すごいよ。


ストレスたまっているのかな……。


ひとしきりなでると門亜は落ち着いたのか、シャワー浴びてこよう、と部屋を出て行った。


ふう。びっくりしたなぁ。もう。音環は傍らに置いたギターを手に取った。……少し話を聞くようかな。


しばらくして、髪を乾かした門亜が上がってきた。そして音環の隣にちょこん、と座ると寄りかかった。


「玲央と翔大の写真見た?ひざから下、真っ黒!」


門亜が笑いながら言った。音環もスマホを取り出すと改めて写真を見た。


岡山、そして翔大のママが眠るお墓へのお参りを経て、家に帰ってきました。

無事に行程を終えて、みんなの距離がぐっと縮まったようです。

次はいよいよ最終のエピソードです。

読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。