第16章 閑話休題 再会⑤まるで精霊流し
まだまだ5月の頃。音環は子ども部屋を作るために片づけをしていた。
両親に連絡を取ったら、2階の一番奥の部屋にある大きいスーツケースだけ送ってほしい、後は処分してかまわない、と返事があった。
音環は家族が出来たことは伝えなかった。
一番奥の部屋……門亜の部屋にしようと思っていた部屋だ。扉を開けると、スーツケースはすぐに見つかった。ほかにないか……と見まわしたが、それ以外に見つからなかった。
両親の荷物は、楽器の類はそこそこあったものの、それ以外に見当たらなかった。もともと祖父母の家だったこともあって、残っている荷物のほとんどが祖父母のものだ。
父親の実家だったこともあり、学生時代の何かしらが残っていないか見てみたが、どうやら祖父母が亡くなった時にいつの間にか片づけたのだろう。
衣類、雑誌、足踏みミシン……祖父母が何が好きで何を読んでいた、と言った足跡みたいなものと一緒に消えていた。
これを送ったら……本当のお別れだ。まるで精霊流しだな、と音環は思った。
それでも、中身が間違っていないか確認しておこうとスーツケースのカギに手をかけた。幸い、ロックがかかっていなかったのでファスナーを開けてみると、いくつかのアルバムが出てきた。
そして、アルバムを開くと小、中、高と成長していく音環の姿が写真に写っていた。ほかには、大学時代に音環のバンドが出した手焼きのCDが入っていた。
なんだよ。今更。
音環は片付けを止めてコンビニに行くと、スマホで撮っていた門亜たちとのウェディング写真をプリントした。そして、折れないように厚紙を敷くとビニール袋に入れ、アルバムの上に置いた。
来年は送るかわからないけど……。精霊流し。
音環は配送屋にスーツケースを預けると、穏やかな気持ちでおくった。店の自動扉をくぐって外に出る時だけ一回、振り返った。
⑤まるで精霊流し です。
両親はツアーで世界を回るのに忙しかっただけで、決して音環を疎んでいたわけではなかった。
とは言っても、簡単に受け入れるのは難しいことなのだろうと思います。
第16章 閑話休題 再開はこのエピソードで終わりになります。
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