第39話 天空の城を探して
ここからストーリーの本筋に入っていきます。
空がテーマの作品ならこれは必須ですよね。
魔王軍との戦いが近づいている。そう思うと、最近は『イセ100』を開く回数が増えた。
『空飛ぶ車』――クリア。
『ダンジョン攻略』――クリア。
『ロボットを作って乗る』――クリア。
『魔法を覚える』
「これは……まあ、クリアということにしておこう」
上手く使えるとは書いてない。
『ドラゴンに乗る』――クリア。
残った項目を眺めていると、ひとつの文字が目に入った。
『天空の城を見つける』
「……天空の城か」
俺は顔を上げた。
「エリーゼ。この世界って、天空の城とかある?」
「天空の城、ですの?」
エリーゼは首を傾げた。
「そのようなもの、聞いたことがありませんわ」
「そもそも、お城が空に浮かぶ理由がありますの?」
「ロマン」
「……理由になっていませんわ」
◇
それから数日後。
俺はエリーゼと一緒に、遠方の町への配達に向かっていた。
その途中だった。
「……なんだ、あれ」
山脈の一角だけが、異様なほど分厚い雲に覆われていた。雲は山の中腹近くまで垂れ込めている。しかも、ほとんど動いていない。近くの村で荷物を届けたついでに、俺は村人へ聞いてみた。
「あの山、なんていうんです?」
「ああ。ヘビースモーカーズマウンテンだよ」
「…………」
俺は二度見した。
「青いタヌキの映画の森と同じ名前じゃん」
「何の話ですの?」
当然、エリーゼには通じない。村人によると、あの山脈の一帯は一年中あんな感じらしい。
「あの雲は『竜の巣』って呼ばれてる。中はとんでもない風が吹いてるらしい。奥まで入った奴はいないよ」
「竜の巣……」
ますますそれっぽい。
「ちなみに、あの辺に犬の獣人とか住んでたりします?」
「犬の獣人? いや、聞いたことないな。獣人はずっと東の方にいるって話だ」
「ですよね」
偶然だ。きっと偶然。
でも、気になる。
「ちょっと見てくるか」
「わたくしも行きますわ」
「危ないと思ったら、すぐ引き返すから」
俺はエリーゼを支え、山へ向かって飛んだ。雲へ近づいた瞬間、空気が変わった。
「うおっ……!」
風が強い。
しかも一定方向じゃない。
横から、下から、斜め上から。めちゃくちゃな方向から風が叩きつけてくる。エリーゼをしっかり支えながら進もうとしたが、正面から突っ込むのはさすがに厳しい。
「これは無理だな」
いったん距離を取る。
そして上を見る。
「……上からなら?」
高度を上げ、雲よりさらに上へ出た。
そこで初めて全体が見えた。
巨大な雲が、山脈を覆うように渦を巻いている。
そして、その中心。
「穴がある」
雲の渦の真ん中だけ、ぽっかりと空いていた。俺たちはその穴へ向かい、ゆっくり高度を下げる。
雲を抜けた。
「…………」
そこにあったのは、山々に囲まれた広大な高地だった。
広大な森。
どこまでも続く草原。
陽の光を受けて輝く川。
その先には大きな湖があり、ところどころに小さな集落まで見える。雲から落ちる水滴が陽光を反射し、空には虹がかかっていた。
「こんな場所が……」
エリーゼも言葉を失っている。
そのとき。
「ユウマさん……上」
「え?」
言われて見上げる。
俺は固まった。
さらに高い空。
そこに巨大な石造りの城が浮かんでいた。
「…………マジかよ」
頭の中に、さっき見た文字が浮かぶ。
『天空の城を見つける』
本当にあった。
『天空の城を見つける』――クリア。
そのとき、下の方から声が聞こえた。俺たちはゆっくりと高度を下げる。草原の向こうから、小さな人影が何人も走ってきた。
いや、人じゃない。
頭には犬の耳。
腰の後ろには、ふさふさした尻尾。
しかも、みんな小さい。
「……犬の獣人?」
天空の城。
雲に隠された高地。
そして、小さな犬獣人たち。
俺はどうやら、とんでもない場所を見つけてしまったらしい。
最後まで読んでいただきありがとうござます。
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