第31話 王様、空飛ぶ車に乗る
ドラゴンボールを意識してます
俺は王様に呼び出され、王城へ向かっていた。最近、王城に呼び出されることにもすっかり慣れてしまった。最初の頃は、王様に呼ばれたというだけで緊張していたのに。
慣れって怖い。
謁見の間へ入ると、王様と大臣が待っていた。
「来たか、ユウマ」
「はい」
王様は俺を見るなり、少し身を乗り出した。
「お主、空飛ぶ車でダンジョンへ行ったそうだな」
「はい」
「ワシも乗ってみたい」
「……空飛ぶ車ですか?」
「うむ」
「何か急ぎのご用事でも?」
「いや、ない」
即答だった。
「どこかへ行かれるとか?」
「いや」
「荷物を運ぶとか?」
「それもない」
「…………」
「…………」
「ただ乗ってみたい?」
「うむ」
王様は堂々と頷いた。
潔い。
「分かりました」
「おお!」
王様の顔が一気に明るくなる。……王様って、こんな顔するんだな。その横で、大臣が小さく咳払いをした。
「陛下」
「なんだ?」
「陛下ともあろうお方が、遊び半分でそのような……」
「よいではないか」
「しかしですな――」
大臣が王様を諫める。さすが大臣。ちゃんと止めるところは止めるらしい。
「では、王様だけでいいですね」
俺が言うと――
「いや」
大臣が即答した。
「…………」
「…………」
王様が大臣を見る。
俺も大臣を見る。
「大臣?」
「なんでしょう」
「今、乗らないみたいな話をしてませんでした?」
「私は陛下の身を案じているのです」
「じゃあ、地上で待っててもらって――」
「それでは安全確認ができません」
「…………」
「…………」
「乗るんですか?」
「陛下がお乗りになる以上、私も同行せざるを得ないでしょう」
「なるほど」
俺は頷いた。
「大臣も乗りたいんですね」
「違います」
「じゃあ乗らなくても――」
「乗ります」
「…………」
王様が笑い始めた。
「お主も乗りたいのであろう?」
「陛下」
「昨日から楽しみにしておったではないか」
「陛下!」
「…………」
俺は大臣を見る。
大臣は黙った。
「昨日から?」
「…………」
「楽しみにしてたんですか?」
「……安全確認です」
耳が少し赤い。
……絶対乗りたいんじゃん。
そこへ王太子がやってきた。
「父上、空飛ぶ車に乗られるのですか?」
「おお。お前も来るか?」
「ぜひ」
その隣には、王太子妃もいた。
「まあ、私もご一緒してよろしいですか?」
「もちろんだ」
王太子妃と目が合うと、彼女は俺にだけ分かるようにほんの少し微笑んだ。
「…………」
俺も小さく笑って返す。
彼女とは以前、一度だけ二人で空を飛んだことがある。もちろん、王太子には秘密だ。
「ユウマ?」
王太子が俺を見る。
「はい?」
「どうかしたか?」
「いえ、何も」
王太子妃も何事もなかったような顔をしている。
「…………」
危ない危ない。
こうして、俺の空飛ぶ車に、王様、大臣、王太子、王太子妃の4人が乗ることになった。
◇
王城の外へ移動し、空飛ぶ車を用意する。王様は興味津々といった様子で、車の周りを歩いている。
「これが例の……」
「はい」
「本当に飛ぶのだな?」
「飛びますよ」
「どうやって?」
「俺の飛行能力です」
「なるほど……」
王様は車体を眺めながら感心している。全員が乗り込んだところで、俺も運転席へ座った。
「じゃあ、飛びます」
飛行能力を発動する。
ふわり。
車体が地面から離れた。
「おお……!」
王様が窓の外を見る。
「本当に飛んだぞ!」
王太子も身を乗り出すようにして、眼下を眺めている。
「これはすごい……」
王太子妃も楽しそうだ。
「皆様とこうして飛ぶのも楽しいですわね」
大臣だけは腕を組み、平静を装っていた。
「大臣」
「なんでしょう」
「楽しいですか?」
「……安全確認中です」
「そうですか」
口元がちょっと笑ってるけど。俺は空飛ぶ車をゆっくりと上昇させる。
城壁を越え、王都の上空へ。
眼下には、建物がびっしりと並んでいる。道を行き交う人々は豆粒のようだ。腕輪のおかげか、これだけ乗せても魔力の減りは以前よりずっと穏やかだ。
「これは……」
王様が窓の外を眺めながら呟いた。
「馬車とは、まるで違うな」
「道を走る必要がありませんからね」
「これが何台もあれば、国の移動そのものが変わるのではないか?」
「いや……」
俺は苦笑する。
「これ、俺が飛ばしてるんで」
「……そうであったな」
車だけ増やしても意味がない。そのまま王都の上を一周して、王城へ戻った。
車体を地面へ降ろす。
王様は車から降りるなり、満足そうに言った。
「面白かった」
「それはよかったです」
「また乗せてくれ」
「機会があれば」
続いて大臣が降りてくる。
「安全性については問題なさそうですね」
「楽しかったですか?」
「安全性については問題なさそうですね」
二回言った。
◇
王城を出たあと、俺は歩きながらさっきの光景を思い返していた。王様も大臣も王太子も、空飛ぶ車を見て子供みたいに目を輝かせていた。
やっぱり、男っていくつになってもこういうのが好きなんだな。
最後まで読んでいただきありがとうござます。
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