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落ちてる途中で異世界なんて聞いてない ~飛行スキルで、なんとかやっています~  作者: FUKA


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22/42

第22話 竜騎士レオン、爽やかすぎる

さわやかイケメンは正義



翌日、王城の訓練場へ呼ばれた俺は、空を見上げていた。広い。とにかく広い。騎士たちが何人も訓練できるほどの敷地。その中央に、巨大な竜が一頭いる。青みがかった鱗に大きな翼、鋭い爪。そして、その首元を撫でている男。背が高く、爽やかな笑顔で、立ち姿にも無駄がない。……なんだこの完成度。男がこちらへ歩いてきた。


「ユウマだな?」

「はい」

「俺はレオン。レオン・カゼハヤだ」

名前まで爽やかイケメンかよ……。

「王都空中機動部隊の指揮を任されている」

「偉い人だった」

レオンが笑う。

「そんなに構えなくていい。今日はユウマが空でどう動くのか、俺自身の目で見てみたくてね」

「なんかもう、憧れの先輩みたいな喋り方ですね」

「よく言われる」

冗談めかして片目をつぶる。様になっている。ずるい。


隣のエリーゼまで感心したように言った。

「あら、なかなか感じのいい方ですのね」

「あなたまで簡単に懐柔されないでください」

「褒めただけですわ」

レオンが楽しそうに笑った。話は早かった。レオンは俺の飛び方を見るため、模擬戦を提案してきた。高度は150メートルまで。致命傷につながる攻撃は禁止で、戦闘続行不能、もしくは降参で終了。


「お互い全力を尽くそう」

爽やかな笑顔で拳を軽く差し出され、俺も合わせる。


「いや、なんでこんな爽やかに戦う流れになってるんですか」

「嫌か?」

「……ちょっと楽しみではあります」

「なら十分だ」

この人、ずるいな。開始位置へ移動し、俺は浮上して短剣を3本展開する。レオンは騎竜の背へ軽く飛び乗り、騎竜が翼を広げた。開始の合図。


次の瞬間。

「消えた!?」

横から風圧が叩きつけてきた。反射的に上へ逃げると、その直下を巨大な影が通過する。


「はやっ!?」

音が遅れて届く。俺はさらに上昇し、レオンの騎竜が追う。速い。とにかく速い。でも、すぐに分かった。速いのは竜だ。ただし、あの速度で俺の位置を読み、先回りしているのはレオン本人だ。


「これ、竜が速いだけじゃないな……!」

急降下。レオンも追う。横へ逃げても追いつかれる。急停止すると、騎竜は大きく旋回してまたこちらへ向く。無駄がない。なら、遠隔で捉えられれば。集中し、レオンと騎竜を意識の中で掴もうとする。


「……駄目だ」

速すぎる。視界には入っているのに、捉えたと思った瞬間にはもう別の場所にいる。ワイバーンより速く、しかも動きが読めない。



「天空落としは無理か……!」

「何か狙っていたな?」

レオンの声が横から聞こえた。

「気づくんですか!?」

「視線で分かる」

怖いな、この人。追いかけても無理。捉えるのも無理。だったら、相手を狙わなければいい。来る場所に先に置く。俺は短剣3本を散らし、レオンを見る。一度離れた。次に来る角度、騎竜の旋回方向、速度。


一本目を空中へ静止。

二本目を少し下。

三本目をさらに横。

レオンが加速する。

来る。

一つ目。

避けた。

二つ目。

騎竜が翼を傾ける。

三つ目。

ブンッ。

布が宙を舞った。

「……当たった?」

レオンが少し離れた場所で止まり、自分のマントを見る。端が少しだけ切れていた。そして、笑った。


「すごいな、ユウマ」

「怒らないんですか?」

「模擬戦だろ?」

爽やかすぎる。

「なら、こちらも少し速度を上げる」

「今まで本気じゃなかったんですか!?」

嫌な予感しかしない。次の瞬間、本当に見えなくなった。右――いない。上――いない。後ろ――

「ここまでだ」

首筋のすぐ横で、訓練用の槍が止まっていた。



「……参りました」

完敗だった。地面へ降りる。悔しい。悔しいはずなのに、なぜか笑っていた。


「強すぎません?」

「いや」

レオンは首を振る。



「危なかった」

「え?」

「あの剣の置き方だ。もう少し読みが正確なら、まともにもらっていた」

「それ、謙遜しすぎでは」

「本当にそう思ってる」

レオンが騎竜の首を撫でる。

「それに、俺より強い人間なら他国にもいる」

「レオンさんより強い人が?」

「セレスティア王国の剣聖、アレクシス・レイヴァン。俺は一度も勝ったことがない」

「そんな人がいるんですか」

「世界は広いよ」

レオンは俺へ視線を戻した。

「俺なら、もっと速く飛ぶことを考える」

「はい」

「ユウマは、自分ではなく相手の進路を読んで、そこへ武器を置いた」

少し笑う。

「戦い方そのものが違う。だから面白い」



「褒めすぎです、それ」

「冗談じゃなく本気だ。俺はお世辞を言わない主義でね」

「やだ、何この人。イケメンすぎない?」

思わず声に出た。



「ん? 何か言ったか?」

「いえ、なんでもないです」

フィリアもこちらへ来る。

「実力は十分確認できました」

嫌な言葉だ。実力確認。



「念のため言っておきますけど、兵士にはなりませんよ」

「分かっている」

答えたのはレオンだった。

「軍人になれとは言わない」



「じゃあ?」

「王都空中機動部隊の特別協力員になってほしい」

「特別協力員?」

「必要な時だけ、力を貸してほしい。それ以外は自由だ」

「配達の仕事を続けても?」

「もちろんだ」

即答。それなら。

「分かりました」



「助かる」

レオンが手を差し出し、俺も握り返した。


軍人ではない。配達屋のまま、必要な時だけ空の仕事を手伝う。それなら悪くない。その直後、身体の奥で感覚が変わった。


《飛行(Lv44)》


「上がった……」

レオンとの高速空戦。急上昇、急降下、急停止、横移動。その全部をしながら、短剣3本まで制御した。負荷としては相当だったらしい。飛べる高さの感覚も広がっている。今なら、300メートルくらいまで届きそうだ。もちろん、今日の模擬戦では150メートルまでしか上がっていない。あくまで、新しい上限が感覚として分かるだけだ。


「また伸びたのか?」

レオンが聞く。

「みたいです」

「ますます面白いな」

本当に楽しそうだ。帰り際、レオンが言った。


「また会おう」

「次も模擬戦ですか?」

「いや。次は稽古として」

「なんか違うんですか、それ」

「模擬戦は白黒つけるもの」

レオンは騎竜へ手をかける。

「稽古は、お互いのためにやるものだ」

そのまま軽々と背へ乗った。

「今日はよく休め。無理をしたのは、ユウマの体の方が知っているはずだ」

「はい」

騎竜が翼を広げ、一気に空へ上がっていった。最後まで爽やかだった。その夜、王都の宿舎の屋根の上で、エリーゼが隣に座っている。


「楽しかったですわ」

「見てた人はそうでしょうね」

「死ぬかと思いました」

「模擬戦ですわよ」

「気持ちの問題です」

エリーゼが少し笑う。

「でもあなた、笑っていましたわよ」

「……まあ」

否定できない。負けた。完敗だった。でも、空にはまだ上がある。それを知れただけでも、今日負けた意味は十分にあった。


――現在の飛行スキル――

《飛行(Lv44)》

最高高度:300m

滞空時間:80分

できること:

・安定した高速飛行

・長距離飛行

・高速域での急上昇・急降下・急停止

・荷物を持った状態での飛行

・他者の遠隔飛行

・生物への遠隔飛行

・物体の遠隔飛行

・外部3対象まで同時制御

・無機物の位置・角度・姿勢制御

・無機物の回転制御

・回転させながらの高速移動

・浮遊剣

・ユウマ手裏剣

・天空落とし

高速飛行中の精密制御が向上。ただし、レオンのように高速かつ不規則に動く対象は、依然として遠隔ロックが極めて難しい。



最後まで読んでいただきありがとうござます。


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よかったらインスタも見ながら楽しんでください

https://www.instagram.com/yuma.ochitara?stkn=dzl3cXJtMmg0bmkx

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