↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちてる途中で異世界なんて聞いてない ~飛行スキルで、なんとかやっています~  作者: FUKA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/40

第21話 国王でも飛びたい

やつぱりみんな飛んでみたいよね。

これ書いてるとき毎日のように飛ぶ夢見てましたよ

王都。でかい。広い。そして、建物が高い。城壁をくぐった瞬間から、視界に入るもの全部の規模がおかしかった。石造りの建物が何階も重なり、その向こうには尖塔がいくつも伸びている。


「建物の高さがもう殺しに来てる」

「王都ですもの」

隣のエリーゼは平然としていた。さすが貴族令嬢、慣れが違う。


俺たちは王家が用意した宿舎へ案内された。国王との謁見は翌々日。そこまでは聞いていた。問題は――



「陛下の御前では、まず片膝をつき、頭を垂れます」

作法の教師が真顔で言う。

「声をかけられるまで、顔を上げてはいけません」

「はい」

「言葉遣いにも十分お気をつけください」

「はい」

「普段の調子で話されては困ります」

「王様に会うのは知ってましたけど、作法までは聞いてないですよ」

「今から覚えていただきます」

「一番嫌な言葉だ」

横でエリーゼがため息をついた。

「わたくしが手本を見せますわ。よく見ていなさい」

そして、すっと前へ出て片膝をつく。背筋も、頭の下げ方も、手の位置も、全部が自然だった。


「……すご」

「何年やっていると思っていますの」

「俺、2日です」

「言い訳になりませんわ」

厳しい。俺も真似する。


「頭を下げる。勝手にしゃべらない。敬語。よし」

「雑すぎますわ!」

最低限できればいい。


翌日は少しだけ王都を見て回った。大通り、露店、商店、馬車の数、人の数。全部リンドベルとは桁が違う。俺は王城を見上げる。


「……これ、配達始めたら絶対迷うな」

「始める気なのですね」

「当然です。俺、配達屋なので」

エリーゼが少し笑った。そして謁見当日。案内された広間は想像していた以上に広かった。居並ぶ貴族と騎士、大臣。その奥の玉座には、白髪の混じった壮年の男が座っている。アルヴェイン王国の国王、ヴィクトール・アルヴェイン。


緊張する。教わった通りに片膝をつき、頭を下げる。隣のエリーゼは完璧だ。俺も、たぶん大丈夫。


「面を上げよ」

声が響く。恐る恐る顔を上げると、王の表情は思っていたより柔らかかった。


「そなたが、噂の空飛ぶ配達屋か」

「は、はい」

「堅苦しい挨拶はよい。楽にせよ」

助かった。周囲の貴族が少しざわつくが、王は気にしていない。


「報告は読んだ」

「はい」

「自ら空を飛び、人も飛ばし、荷も運ぶ」

「はい」

「そしてワイバーンまで倒したとか」

「あれはクロにも助けられたので」

「クロ?」

「猫です」

王が少し黙る。

「……猫か」

「猫です」

そこは今どうでもいい。王は少し身を乗り出した。


「余はな」

「はい」

「昔から、空を飛ぶ夢を見ておった」

「……はい?」

「鳥を見れば羨ましく思い。竜騎士を見れば、自分も空へ行ってみたいと思った」

顔が少しずつ、王様のものではなくなっていく。


「そなたの話を聞いた時は、実に心が躍った」

嫌な予感。

「ユウマ」

名前呼びになった。

「はい」

「余も飛ばしてくれ」

広間の空気が止まり、大臣の顔色が変わる。


「へ、陛下!」

護衛の騎士たちも一斉に動く。

「おやめください!」

「御身に何かあれば一大事にございます!」

王は不満そうだ。

「余の身に何がある。ただ浮くだけであろう」

「そういう問題ではございません!」

すごい。国の頂点が全力で止められている。


「では」

王が少し考え。

「50センチでよい」

大臣が即答した。

「高さの問題ではございません!」

「50センチなら転んでも大したことはあるまい」

「陛下!」

俺は完全に巻き込まれている。さすがに謁見の間では危ないということで、そのまま城の裏庭へ移動することになった。仕事が早い。いや、止められなかっただけか。裏庭では周囲を護衛が囲み、大臣が俺に何度も確認する。


「落下した場合は?」

「落としません」

「万が一は?」

「……落としません」

「万が一――」

「もうよい」

王が遮った。助かった。俺より王様の方が話が早い。エリーゼが前へ出る。


「陛下」

「なんだ」

「まずは短時間、低空から。よろしいですね」

「うむ、承知した」

素直。俺にではなく、エリーゼの言うことには素直だな、この人。


「エリーゼ、頼りにしてます」

「任せなさい」

何の役割なんだろう。王の前へ立ち、集中して対象を捉える。相手が国の頂点だと思うと、今までで一番緊張する。


「では、いきます」

「うむ」

ふわりと王の身体が地面から離れる。10センチ、30センチ、そして50センチ。そこで止め、完全に静止させる。


「……おお」

たった50センチなのに、王の目は完全に少年のそれだった。護衛たちもざわついている。


「陛下が……浮いている」

「本当に足が地面から……」

俺にとっては、もう当たり前になりつつある。でも、ここでは全然当たり前じゃない。


「陛下」

俺が声をかける。

「約束の50センチです」

「うむ」

少し間。

「……もう少し」

来た。

大臣が。

「陛下!」

「1メートルだけだ」

「先ほど50センチと!」

「50センチ飛んだのだから、次は1メートルであろう」

理屈になってない。でも、王はめちゃくちゃ楽しそうなんだよな。俺はエリーゼを見る。エリーゼも少し困った顔をしていた。


「1メートルまでですわよ」

「うむ!」

素直すぎる。1メートル、2メートルと、結局少しずつ上がった。


「陛下、このあたりで」

「もう少しだけ」

3メートル、そして5メートル。そこで止める。これ以上は上げない。王が庭園を見下ろす。


「ほう……」

さっきまでのはしゃぎ方とは違い、少し静かになった。


「庭が、こんな風に見えるとはな」

いつも歩いている場所。いつも見ている景色。でも、高さが変わるだけで全然違う。王はしばらく黙って景色を見ていた。そこへエリーゼが声をかける。


「陛下。そろそろお時間です」

「うむ」

本当に素直。

「名残惜しいが、仕方あるまい」

俺はゆっくり高度を下げる。5メートル、3メートル、1メートル。そして着地。王は地面に足をつけても、しばらく動かなかった。


「……素晴らしい体験であった」

大臣が駆け寄る。

「陛下、お怪我は!?」

「ない」

王は笑った。

「むしろ、生涯忘れられぬ思い出ができた」

その表情を見て、俺も少しだけ嬉しくなる。


「ユウマ」

「はい」

「褒美を取らせよう」

「え?」

「何か望みはあるか」

褒美。地位、金、装備。いろいろ浮かんだ。でも、一番欲しいのは――



「それなら」

俺は答える。

「王都でも、配達の仕事を続けたいです」

王が目を瞬く。

「それでよいのか?」

「俺、本業が配達屋なので」

少し間を置いて、王が笑う。


「面白い男だ」

そして大臣を見る。

「商業ギルドへ話を通しておけ」

「はっ」

「王都で商売をするのに困らぬようにしてやれ」

「ありがとうございます!」

これはかなり助かる。


「それと」

王が続ける。

「また飛ばしてくれ」

大臣の顔が固まった。

「陛下……」

「低いところでよい」

「本当ですか?」

「うむ」

少し間。

「次はもう少し高く――」

「陛下」

大臣の低い声。

「……低いところでよい」

学習した。そして、王は思い出したように言った。


「そうだ」

「はい?」

「そなたには、ぜひ会わせたい者がおる」

「会わせたい人?」

「ああ」

王が楽しそうに笑う。

「この国で最も空を知る男だ」

この国で最も空を知る男。今まで、自分以外で空を自由に使う人間には会ったことがない。竜騎士なら空を飛ぶ。でも、どんな人なんだ。その言葉に、少しだけ胸が高鳴った。


――現在の飛行スキル――

《飛行(Lv42)》

最高高度:250m

滞空時間:70分

できること:

・安定した高速飛行

・長距離飛行

・荷物を持った状態での飛行

・他者の遠隔飛行

・生物への遠隔飛行

・物体の遠隔飛行

・外部3対象まで同時制御

・無機物の位置・角度・姿勢制御

・無機物の回転制御

・回転させながらの高速移動

・浮遊剣

・ユウマ手裏剣

・天空落とし





最後まで読んでいただきありがとうござます。


評価とブックマークで応援いただけると、執筆(は終わってるから投稿かな)の励みになります!


よかったらインスタも見ながら楽しんでください

https://www.instagram.com/yuma.ochitara?stkn=dzl3cXJtMmg0bmkx

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。