ロボット
ロボット三原則という古い伝説があるが、それは昨今AIについての行動規則で議論の元となる。
第一条
ロボットは人間を傷つけ害する行動や看過をしてはならない。
第二条
ロボットは人間からの命令が人間への危害を及ぼさないのであれば服従する。
第三条
ロボットは人間への危害防止や命令順守のためには自分を犠牲にする。
つまりロボットの行動制御は、最も簡単に言い直すと、
人間への危害の発生防止 > 人間からの命令 > 自分の保身
人間に対してこの優先順序で動け、という優先度設計の話だ。
その伝説はどうやらミステリー作家による発案らしいにも関わらず、なぜか現在パートノイドの行動制御に採用されてしまっている。
これらの原則だけだと、まるでパートノイドは「家から出ていけ帰ってくるな」だの「スクラップになれ」……のような、言葉が粗雑な俺のような人間の憤慨をも、それを命令と受け取って実行に移すロジックにしてしまいかねない。
だが伝説の頃とは異なり、ロボット知能はAI処理系として実現して特性が明確になり「感情表現の暴走による発言群は命令系統ではない」という判断処理を行ってくれる。そんな技術進歩があるお陰で、俺が何か心ない一言を口走ったとしても家出されずに済んでいるわけだ。軽自動車1台分だけではなくなってる心の居場所だ、俺が気を付けないといけない。
自分の家にベランダの模様替えをしてくれている嫁がいるというのはとてもいいものだ。
都市部の端っこの冴えないアパートだけど、俺は日光浴くらいはしたくてビーチベッドを置けるベランダ面積がありそうな物件を選んだんだ。つまり、広いわけではないが、洗濯機や非常通路でいっぱいの間取りよりは1ランク居心地がある狭さだ。そこにトゥルミナはよく飾り付けをしてくれる。ウッドフェンスを工夫したり、プランターを配置したり。
基本的に人間の居室空間はそうそう配置変えするものではないが、ベランダならちょくちょく変更しても誰も困らない。むしろ、今日みたいに疲れて帰宅した週末の俺の気持ちを、爽やかな空間で迎えてくれたりする。
「トゥルミナは装飾が上手だ、これも居心地が良さそうだな。」
「ダーリン、お外で寝てしまった時に風邪をひかないように、近所のW寝具店で明日から4割引きセールが始まるのよ。」
「毛布は室内のを持ち出せば足りるから大丈夫だよ、ありがとうトゥルミナ。」
夕食後にはここから二人で、いつもの長閑な夜景を眺めよう。




