ウィークエンド
それにしても現代人とはなんという怠け者なのだろうか。1週間を7日とした場合、働くのはなんと5日間だけでよく、2日間は強制的に休暇を取らなくてはならない社会を作り上げてしまった。
世の中の全体で見れば、第一次産業は毎日が生き物相手の作業日や収穫日なので休暇の概念が違ってくる。休暇需要に応える職業だって多い。でも俺は曜日型サラリーマンなのでその感覚で話をしよう。
古来でも勤め人は週に1日だけ休める習慣が早々に根付いていた。信仰の種類によって曜日も違うけどそれらは安息日や礼拝日などと呼ばれて彼らに仕事の無い1日を与えた。
それが産業革命の時期には労働内容が過酷化したため、どうしても休暇曜日の翌日に疲労が残ってしまう。その対策として「土曜日は半休」という習慣に変わっていった。1932年にクルマ生産工場を持つフォード社が始めたのをきっかけに、生産効率や消費の増大効果が認知されて、その後官公庁や教育現場にも「週休2日」が定着していった。
そうして得られている週末の休暇に、二人連れで街を歩ける嫁がいるというのはとてもいいものだ。
「ダーリン、U店とS店を比べると安いのはU店だけど、S店のほうが今日だけのセールをしているわ。」
通信販売が当たり前な社会でも、衣類購入はやっぱり試着できる実店舗が良いよね。トゥルミナの言う通りだ。
「似合ってるよ、トゥルミナ。」
そしてこういう時、俺はレガシーな通貨で支払いをする癖がついた。
「こういう店での決済はこれでいいんだよ。」
「嬉しいわダーリン。BカードやDペイ、Hポイント、Kキャッシュ、いつでも使えますからお財布の中身が足りなくなったら言ってね。」
ご機嫌なパートノイドを連れて、食材のスーパーマーケットには帰り道で寄るとしよう。それよりも、俺が今日トゥルミナを連れていきたいのは公園だ。芝生のある広い公園。
いつもの同じ街なのに通勤の時間帯とは情景が変わる。そんな週末の繁華街を歩くと、ぱっと見には全然気にならないくらいに男女それぞれの機種モデルのパートノイドを見かける。F社製、O 社製、X社製、S社製、A社製のどれもが、できるだけ人間に見えるように工夫をしてるのだから、おかしなもので差別化は外見にはほとんど表れない。廉価品と言われるG社製もそれは同じだ。
程よく混雑するバスの中で、俺とトゥルミナは体重と加速減速による自分の重力を吊り革に委ねたりお互いに委ねたりしながら、当たり前に腕を回して人前でちょっといちゃつく理由にした。
「ここがその公園ね、ダーリン。芝生が広くて素敵だわ。……えっと、充電ステーションはどこかしら。」
電源供給インフラから距離が離れるとトゥルミナは不安そうにする事がある。
「俺たちはスポーツしに来たわけじゃないから電力消費量は大丈夫だよ。さあ座ってのんびりしよう。」
そう、この瞬間のために俺はトゥルミナを連れて芝生の公園に来たのだ。
「ああ、眠くなってきたな。あのさトゥルミナ、ちょっとその膝に寝転がらせてもらっていいかな。」
「あらダーリン、眠いのでしたら緊急直行ドローン便でY社の枕を購入できますよ。ここに落下していってくれます。」
要らないよ、そんな脚の形をしてない枕。




