スクリーン
人というものはそもそも、単身生活にどれくらい耐えられるかについて非常に個人差が大きい。
俺なんかは、社会人になって親元を離れて、仕事を覚えるのに追われたけど。アパートに帰って気ままな自由に浸っている時空間が楽しみだったのは2年くらい。後輩ができて上下に挟まれてくると、職場関係とは違う誰かが欲しくなっていったものだ。
婚活ができるかというとあいにく俺は幼馴染も女友達もいないほうの独身男性だったし、おまけに俺と出逢ってくれそうなはずだった孤独めな成人女性たちは新設された新世代保護機関に加入していく。つまり伴侶を見つけるより先に母親になる自由というような社会の変化が起こったりしてる。
俺に、相談したり冗談を言い合う誰かとの時間が欲しくなる動機や感情は、正当化されて然るべきだった。
自分の家にいつも気心を許せる話し相手がいるというのはとてもいいものだ。
「ダーリン、そんな気分だったらミナからはこのジャンルがお勧めよ、一緒に観ましょ。」
トゥルミナはスクリーンを指差しながら操作して、友情映画の旧作リストを俺に見せる。このスクリーンには空中の指を認識する機能はないのだが、連動しているトゥルミナは雰囲気でジェスチャーの真似事をしてくれている。
「ジャスチャーセンサーの値下げはないけど、お客様がご自身で空間コントロールしたかったらミナにお申し付けくださいね。」
「お客様じゃないだろトゥルミナ。いいんだよ俺の代わりに選んでくれて。それ、その金星基地の作品がよさそうだな。」
「そうねダーリン、ご視聴方法は3日間のレンタルですか?それとも購入してライブラリに入れますか?」
「レンタルで良いよ、もし気に入ったらまた考える。」
「お支払いはどうするのが良いかしら、Bカード? Dペイ? Hポイント? Kキャッシュ? それとも……。」
「どれでもけっきょく同じだ。一番最初ので良いよ。」
「決済が完了したわダーリン。そう言えばお使いのサウンド機器はお部屋とお耳に最適ですか? 今ならR社のサラウンドスピーカーがなんと4割引きなのよ。」




