コンビニエンスストア
街の商店。本来そこに建つほとんどの小売店というものは、店主が客対応して営まれるものだった。
人件費という経費は発生しない分、夕方には終業時間となる。店主は遅めの晩御飯を食べて、商店街は1軒1軒また明日に向けて明かりを落とす。
日曜日には営業する必要もないが、急用でも運が良ければ門を叩いて売ってもらえた事もあったようだ。
そんな小売店が企業体へと変わり、なんでも取り揃えるようになった業務形態はスーパーマーケットとも呼ばれたし、専用のビルが建てられるとデパートとも呼ばれるようになった。そうした売り場への品揃えの安定を支えたのは物流の高度化だった。だがその物流の高度な管理方法は、やがてある時、個人経営規模だったはずの小売店店舗にも進化をもたらした。それが、24時間営業の小規模スーパーマーケットとも呼べる、コンビニエンスストアだと言われている。
最も厳しかったと分析される点はフランチャイズ契約の内容だったようで、人間には私生活や睡眠という時間が必要なのに、店舗は24時間営業が鉄則とされる。なので2交代制や3交代制でアルバイトを雇用する運営が大前提となるが、なんと店員の応募が満たされなくても休業が許されない契約だったという。そのため、多くは現状の店員、そして最終的には店主が色々な生活を削らなくてはいけなくなるというのが実態らしかった、というのが今なお語り継がれている歴史である。
一緒にコンビニに買い物に行ける嫁がいるというのはとてもいいものだ。
「ダーリン、この先を曲がったサンムーンで、チキンおでんがセール期間中だわ。」
「おいしそうだね、他にも何か買う物があったかな。」
広告が入ったかもしれない気もするけど、人気商品だから普通の会話かな。
「いらっしゃいませ~。」
「……あら、ダーリン、あの店員さんって。」
うん、どこかで見た事がある。
「フォスロウラ? ここでバイトしてるのかい?」
店員の正面に駆け寄ったトゥルミナは、向き合った位置から何気ない瞬きを交わす。
「個体識別プロトコルを確認したわ、この店員様はO社の居候様とは別個体ですわねダーリン。」
「そうなんだ、豊富にある造形モデルの種類がたまたま同じなんだね。瞳の色がちょっと違うかな。」
「お知り合いのO社製パートノイドがいらっしゃるのですね、お客様。私はO社製パートノイドのジルファムーンと申します。」
さすが人気機種だね、……と俺は言おうと思ったけど。俺は今、G社製のトゥルミナを連れている。
「24時間営業ですものね、昼と夜と臨時も入れて人間様の交代だけでは大変だったかもしれないお仕事ですわ。」
俺も学生時代には経験があるけど、まあ暇な時間帯も少なくないので表現しづらい所ではあるが。それにしても……。
「ここ、会計レジというよりも諸手続きの受付窓口だね。店内のほとんどが真新しい自動販売機だらけになってる。」
小面積で商品項目は多いけど、元々品揃えは限られていた。自販機が多品種対応で高機能になれば、こういう店内はいずれ来るコンビニの最適解だったのかもしれない。
「でもこれだったら手続関係も全自動化すればいいのにな……あ。はい、辛子多めに、2本お願いします。」
ジルファムーンさんはエプロンをしてチキンおでんを目の前で揚げてくれる。
また来よう。
「交代時間ですよジルファちゃん。」
「お客さんの量はそこそこだったわ、さ~充電しようっと。その間お願いね、ロウラちゃん。」
「O社のパートノイド同士はこうして交流して情報交換する、こういうところが顧客対応品質を上げるのよね。」
「そうそう、社会経験~てやつ? それ。」
「それにしてもする事の種類が多いわねコンビニって。」




